太陽は動かない (2020) 

文字数 1,852文字

【 NO TIME TO DIE より先に観ていいのかな? 】2021/3/5




冒頭シーン、はて僕は「 NO TIME TO DIE」を観ているのかい?
と勘違いするくらいのアクションとスピードの炸裂、
一気に引きずり込まれた。
言葉を換えれば、007オープニングのコピーともいえるのだけど、邦画でも高レベルのコピーができることにホッと安心したりもする・・・「やればできるじゃん」。
実は原作に大きな懸念を抱いていたにもかかわらず この初っ端の映像でシネマの力を実感した、本作は今までの吉田修一原作同様にシネマ化大成功であった。
僕が勘違いしたのはタイトル「太陽は動かない」に惑わされたからである。
よくよく製作概要を調べてみると、原作は「太陽は動かない」と「森は知っている」の2作をベースにしていると知った。
ここに至って、極めて貴重な日本的センチメンタリズムに裏付けされた本格スパイ・アクションが誕生したわけである。
ブルガリアロケはじめ海外撮影のエキゾチシズムもまさに「007スタイル」、ここは撮影クルーも俳優たちもよく献身していた、この役者魂!だけでも本シネマは鑑賞する価値があると信じている。
さて、さんざん原作について文句を申し上げてしまったが、以下に「原作の感想」も付け加えておいた、
吉田修一シネマの底力を思い描いて、ぜひ本シネマを大きなスクリーンで観ていただきたい、なにせ「007 NO TIME TO DIE 」と観間違うほどなのだから。


*ご参考
ブックレヴュー(2018/9/2)
①「森は知っている」2015年4月25日 第1刷発行
②「ウォーターゲーム」2018年5月25日 第1刷発行
著者:吉田修一
幻冬舎
スパイアクション小説、シリーズ2~3巻まとめて読了、実は第1巻は2012年6月に読んだままになっていた。
その後2015年に第2巻を入手したものの、あまりに吉田修一作品らしくないこともあってそのまま手元に置きっぱなしだった。
そうしたら、とうとう第3巻が今年5月に発刊されるに至って半ばやむを得ずの一気読みとなる。
その前に第1巻「太陽は動かない」の読後感想文を以下に記しておく:
・・・・・
幻冬舎鳴り物入りのプロモーション作だった、曰く《吉田主一初のジェットコースタークライムノベル》 
(実際にはノンストップ・スパイ・アクションだった)曰く 《心の動きから身体の動きへ》 などなど。
っていうことは アリステア・マクリーン調なのか?と読む前から憶測しきりだった。
吉田修一、今までのジャンル破り作家としての勲章として「芥川」、「山本周五郎」、「大佛次郎」、「柴田錬三郎」の各賞を獲得していることからもうかがい知れるとは言いながら、今度はスパイアクション??
その結果といえば、さすがとしか評価しようがない。著者自身の言葉通り、スピーディで余計な説明なしのアクションの連続、スパイものお約束の
裏切りの数々、あっという間に大作を読み終える。
しかも 物語の底には主人公の生い立ち、日本国の低迷、中国の躍進と陰、そして何より「人間の矜持」がきっちりと根を張っている。
つまりは、安っぽいけれど良く造られたジーンズのようだった。
・・・・・
6年前、どうやら僕は期待外れな読後感層を持っていたようだ。何といっても僕はスパイ小説にはちょっとばかしうるさい読者だから。
そして、あまり喜び勇んではいないまま第2、第3巻に着手した。
第2巻では主人公の高校生時代に立ち帰って、スパイにならざるを得ない環境と訓練事情、初のミッション、友情と仲間愛が描かれる。
この展開は吉田修一お得意の「心の動き」に結局戻ってしまったようだが、だから興味深く読み進めることができる。
最後はスパイとしての試練、裏切りで終わる・・・・間違いなく第1巻の前日譚である第2巻のほうが優れていたのは皮肉なことだった。
そして現在に戻っての第3巻では、近い将来枯渇し貴重な資源になるであろう「水」の国際的争奪戦が描かれる。
主人公が属するAN通信社は民間営利目的産業スパイということになっているが、国家レベルでの暗黙の存在でもあるらしい。
日本では、軍情報組織や外務省の諜報活動のリアリティがないだけに、IMF(インポッシブル ミッション フォース)のような特別組織のようだ。
2巻・3巻はある大きなキーパーソンで結び付いているので、たまたま2・3巻一気読みでて物語の布石に首をかしげることもなかった。
さてさて、本作品は映画化が決まったとのこと、2020年まで待ち遠しいものだ。
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