コヴェナント/約束の救出 (2024)

文字数 799文字

【命の貸し借りは個人の問題 】2024/2/29



ガイ・リッチーといえば英国仕込みのウィットに満ち洗練された作風がお気に入りだけど、アフガニスタンでの米軍戦争アクションを撮るとは意外な第一印象 だった。

主演のジェイク(ギレンホール)にしても、ストレートなマッチョを演じていると想定したものの、たまにはそんなキャストもいいかなと思いちょっとだけ期待して拝見した。

戦争アクションシネマを観るにあたっては、大きく二つの姿勢で作品に臨むことにしている。
好戦的か、厭戦的か・・・という仕分けである。
戦闘によって必ず多くの命が無残に奪われる、それが戦争の本質であることは間違いない。
立場によっては、その正当性を主張する目的で、一方では悲惨さを強調して反対の意思を表明するが、原点は無意味で愚かなことである。

ガイ・リッチーは米軍とアフガン人通訳との物語を「命の貸し借り」と合理的に割り切り、戦闘そのものはあのシャーロックホームズ・シリーズに魅せてくれた軽やかな流れの中に落とし込んでしまった。
  
もっとも注力したのは、通訳が負傷した主人公曹長を延々山を越え、谷を渡り、タリバンの目を逃れ、手押し車で基地に連れ戻す姿だった。 この間に起こったエピソードは予期していた以上に真実味を覚えてしまった。
   
邦題の余計な付け足しである「約束の救出」の前提となる、前述の「命の貸し借り」がくっきりとここで刻み込まれることになる。

その「約束の救出」も、最後に騎兵隊が現れるというお約束パターン(これも事実なのだろうか?)でイージーかつ軽快に幕が下りる。

言い訳のように、タリバンによって300名以上の元通訳とその家族が殺害され、数千人が身を潜めているという現状が告げられる。
つまりは、アメリカはもはや世界の警察としての力を失い自らもその役目を放棄したということ、これが本シネマのテーマだったのか。
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