菊とギロチン (2018) 

文字数 451文字

【上滑った閉塞感 】 2018/7/11



大正12年 関東大震災を境にして戦争の色に染まっていく日本の中で生き抜いた
アナーキストと女相撲一座の奇妙な共生が描かれる。

実在のお名前が出てくるアナーキストたちは自分たちの主義に生きることで自己満足し、
女力士は強くなることで不遇な境遇を乗り越えようとする。
この不思議な組み合わせをシネマではカリカチュアして再現する。
僕が知らない名前の俳優さんたちの熱演は、
しかしその演出傾向から外れて空回りしていた。

シネマに登場するのは大正ロマンを謳歌したセレブ達ではない。
食べていけない小作農民、
足手まといとされる女や子供たち、
無意味なシベリア出兵で地獄を見た農民兵士、
虐殺を逃れた朝鮮人、夢見る非力な無政府主義者。
すべて国家構想から逸脱した、それでもれっきとした日本国民たち。
「天皇陛下万歳」に皆が複雑な思いを抱いていた。
その心の奥には、どうにも消し去ることのできない閉塞感が。

今、平成の終わりに大正の終わりを描くことの意義。
大きな閉塞感、富の格差、時代は変わっていない。

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