イノセント (1975)

文字数 685文字

【揺るぎない様式美】 1979/8/13



ヴィスコンティの遺作を処女作と一緒に観る趣向はなかなか贅沢、ただしお疲れ。

イノチェントに生きた男の物語のどこにヴィスコンティはアクセントを置きたかったのだろうか?「人生に快楽や興味を感じないときが来たら幕を引く」として、そのとおりに生きた主人公に僕が共感を抱けなかったことは、別に不思議ではない。

妹のような存在の妻に愛人への気持ちを打ち明ける男、
不義の子(古めかしい表現だけど)を決して許そうとせず、遂には殺してさえしまう男がイノセントなのか?
このような貴族階級が滅びていく必然を伝えたかったのか?
それとも、そんな不条理の中に人間の真実を求めたのか?
もしかして、自身貴族としてのノスタルジーなのか?

残念ながら、僕には見当がつかなかった。
2時間以上の長丁場を主人公に引き回されたような気持ちになった。

しかし、シネマ全体を支える揺るぎもない堂々たる様式美、女性のファッション、、屋敷のインテリアには注目させられた。
こんなすばらしい舞台美術を観ることができるのもヴィスコンティならでは。

ジャン・カルロ・ジャンニーニはヴィスコンティの要求通りリアリズム(クサイほど)に徹し好演だったが、果たして適役だったかどうか疑問だ。
逆に、女優二人は予想以上の出来で驚いた。
ラウラ・アントネッリは最後まで夫を騙し続ける貞淑な奥方を、常に秘密が露見してしまいそうはギリギリの思わせぶり表現でうまく演じていた。
ジェニファー・オニールの妖艶さが、シネマ全般で輝いていた・・・・と思うのは、彼女の役柄が僕にとって唯一、現実的理解の範囲にあったからなのだろうか?

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