ドント・ウォーリー・ダーリン (2022) 

文字数 1,329文字

【グレイト アメリカ アゲイン の愚かな夢】 2022/11/16


先ず最初にネタバレのレヴューになることを警告させていただきます。なお悪いことには、ネタバレをほじくり返して考察しようとします。
これから観ようと思う人、レンタル待ちの人はこの先に進まないようお願いいたします。

・・・・ネタバレ レヴュー ・・・・
番宣ですらネタばらしのヒントを出している・・・「この街はどこかおかしい」と呟くかわいらしい若奥さん。 誰もが本シネマは謎解きタイプのミステリーまたはホラーなのかと思うだろう、僕もそう思った。
そうするとシネマのお楽しみは、その謎を観客が解いて自己満悦するか、または驚愕の結末に感動するかにある。

さて、冒頭から予告編どおりおかしな雰囲気充満の滑り出しだ。
どうやら時代は古き良き時代のアメリカらしい、しかし特定できるものはない。
小さいながらも戸建てのハウス、新婚家庭にふさわしい家電家具がそろい希望に満ちた若い二人。
オヤッ、朝の出勤風景が少し変、思い思いの大型アメ車に乗り込んで会社に向かう夫たち、一列に並んで整然と会社に向かう。
夫たちは何やら秘密の事業に従事している、妻たちはそこに口出しせず掃除・洗濯・食事を担当する。 絵に描いたような良き時代、世界のだれもが憧れた裕福なアメリカ家庭の面影がそこにあった。
では、謎はこの男たちの仕事の内容だろうか、本当は汚れ仕事をしているのではないか・・・うまく誘導される。

そして中盤から、夫婦たちの中に歪が生じてくる・・・さあ そろそろ謎が始動するようだ。
時折襲ってくる爆発音と振動、中身が空っぽな卵、主人公の脳裏にちらつく過去の記憶。
僕にとって強烈だったのは殻を割っても割っても中身のない卵、これは何を意味しているのか?
もしかして、この卵はイミテーション・・・だとすれば彼らの怪しい生活そのものも偽物なのか?
もう一押しするように、同僚夫婦の妻が会社コミュニティに反発し挙句の果てに自殺する、主人公に何かを告げたがっていた。
間違いなく、何かたくらみが進行している、と僕が見守る中あっさりとこの謎は解きほぐされる。

主人公は病院レジデントドクターで過重な医療行為に疲れ切ってはいるが自分の仕事を愛していた。 反対に恋人は無職で意気地のない男、自分の都合だけで彼女をVRの世界に連れ出してしまう、彼女の承諾もなく。

社宅に住む妻たちはそんな愚かな男たちにVR世界に連れ込まれた被害者たち。
夫は世界の繁栄こそ我栄達の道と宣う、男性至上主義者達あるいはミソジスト達、古き良きアメリカを懐かしむ愚かな男たちだ。
本シネマは暗闇の中で女性の息を吹き返す声(音)で終わる。
無事リアル世界に戻れたようだ。
肉体がどのように保管されていたのか知りたいところだが、本シネマのテーマはそこではない。

女性の権利を剝奪し、旧弊な社会秩序に戻そうとする勢力は、いま世界の中で蠢いている。
そんな愚かな男たちの夢から逃げだす女、
愚かな男にとって代わろうとする強い女、
安住の場所から動きたくない女、
また「グレイトアメリカ アゲイン」という言葉が叫ばれ始めた2022年、本シネマの警告を忘れてはいけない。
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