アイ・イン・ザ・スカイ 世界一安全な戦場 (2015) 

文字数 680文字

【強面アメリカ、老練イギリス】 2017/1/17



安全な場所から敵を攻撃する新しい形の戦争の矛盾を描いたのが、2014年の「ドローン・オブ・ウォー」、そこから事態は何も進展していなかった。
この先輩シネマでは、ドローン機長(?)の葛藤と自己矛盾が描かれていた。

今シネマでは、悩みのスケールがずっと大きくなってくる
・・・イギリス首相、アメリカ国務大臣、安全担当大統領補佐官までが
ワイワイガヤガヤと口をはさんでくる。

そのポイントとは、テロには断固とした制裁を加えるべきとするアメリカの理論、
前述の「ドローン・オブ・ウォー」の原題でもあるGOOD KILLの精神だ。
対してイギリスはといえば、もはや盲目的にアメリカの同盟国ではなく、
古くからの生存理論であるところの議論して決せずを範としている。

シネマの見所はそんなイギリス軍にあって純粋に軍事的見地から
テロリスト爆殺を主張するチームリーダー(ヘレン・ミレン)
の存在感だった。
ケニヤの特殊部隊、アメリカのドローン部隊を統率しながら作戦を実行する一方、
イギリス政府の許可を得るための苦労が本シネマの大部分になっている。
前述のとおり、そこにある米英の対比がユニークだった。

シネマは、たった一人(または一つの大切な命)の少女を巡って、
ドローンからの爆殺命令実施が実行されるかどうかというクライマックスに進む。
数十人の自爆テロ犠牲者と一人の少女のの比較に、
僕は広島・長崎の犠牲者の数に思いを馳せそして慄く。

百万超の兵士と十数万の市民の命の比較をしたアメリカ、
いや国家という存在を否が応でも思い出させる。

戦争ほど愚かなものはない。

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