すばらしき世界 (2020)

文字数 675文字

【すばらしき人々がいる世界】 2021/2/12


西川美和フィルムが好きだ。
じっくりと練り込まれた構想と登場人物の裡に入り込む流れが好きだ。

(予告編による)極道が出所し13年ぶりの娑婆での更生エピソード
と、そのタイトル「すばらしき世界」に横たわるギャップと暗渠を楽しみに
していた、今まであまた作られた前科者の悲劇とは違うはずと思った。

シネマは意外にも定番の進行になる。
筋金入りの直情径行型のヤクザを役所さんがいつもの様に熱演し、
親切な人々が彼の更生の道筋を整えてくれるのも定番ならば、
すぐに逆上して社会復帰に失敗する懲りないダメ人間も定番。
半ば更生の道をあきらめて組に戻ろうとする危機なども定番中の定番に違いない。
基礎疾患を持ち定職につけない環境から「生活保護」を申請するシークエンスは、
堅気になろうと決心する主人公を打ちのめす定番だ、これまた。

どこに「すばらしき世界」などあるものかと僕は焦燥感と同時に、
主人公とともに挫折感を味わう。
シネマの中の主人公の友人、支援者、同僚もおそらくそんな深い絶望感を共有したのだろう。
でも、よく考えてみるとシネマの顧客も巻き込んだ主人公の復活物語に関わる全てに人たちにとって、彼と共有した世界はすばらしかった。

シネマにはこの世界をなんとしてでも生き抜く人たちで溢れていた。
すばらしいことではないか。
今回の西川フィルムは素直で美しかった。

老婆心:
刑期を終えた前科者には生活保護しか生きる道は残されていなく、保護金の屈辱に負けず正業に就くための努力がこれまたいかに困難であるか?
某国の責任者にも知っていただきたいものだ。
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