恋妻家宮本 (2016)

文字数 704文字

【ニューシネマ イン ファミレス】 2017/1/28



2017年1月、いきなり本年の邦画最優秀作品・監督候補に出会った。
2月以降の邦画には高い目標ができてしまったものだ。

初監督作品とのお触れが出ていたが自らの脚本を映像できる楽しさと気負いに満ちて、
それらがうまく化学反応していた。
オープニングの一人称目線が気になってしまったのを皮切りに
あまり今まで見たことのない映像が連続する。
すべからく芸術は進化するべきを信条として全編に新しい試みがなされていた。
そんな作り方だが、嫌みなところはなくフレッシュで驚かされる喜びが勝っていた。
物語は夫婦の危機と、主人公教師(阿部寛)の再生を軸にした喜劇であり、
人情噺であり、ファンタジーでもあった。
まさにこれこそ《ニューシネマ》だ。

印象深いのは、喜劇パートとお涙頂戴パートが表裏一体で進行する場面が多数仕掛けられているところだ。
福島の「恋妻駅」でのエピソードは中でも圧巻だった。
予告編でも使用されていた、電車通過で夫の告白が聞こえないシーン。
おそらく僕を含めて多くの人が想像したようなセリフではなかったことを発端に、
二人の告白合戦が始まる。
まるで脚本どおりのように突然起きる駅の中の停電。
停電の時、ろうそくの光で人はいつもより少し素直になれる…言う設定だ。
光の少ないカメラワークのなかでの二人のアップ、
暗闇に紛れての真実の告白、そして予期せぬサプライズ。
僕はこのシーンで涙が止まらなかった・・・感動したのと可笑しくて。

オープニングシーンの違和感はラストシーンですっきりと解消される。
と、ほっとしたのもつかの間、いきなりのミュージカルシーン。

参った、よかった、笑った、泣いた。

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