やがて復讐という名の雨 (2007)

文字数 674文字

【フィルムノワールに偽装したラブストーリー】 2010/5/23



アラン・コルノー監督の作品に「真夜中の刑事/Python 357」がある。
原題はずばり「ポリス パイソン 357」、拳銃の名前だ。
1976年製作、イブ・モンタン主演、よき時代のフィルムノワール逸品だ。

本シネマの原題も「MR 73」 こちらも拳銃の名前だ。
大仰な日本語タイトルは、「あるいは裏切りという名の犬」で味を占めた柳の下ドジョウ作戦なのだろう。
本来はそこに30年前の名作への敬意があったのかもしれない。
そんな想像をしてしまうような暗い匂いに満ちたポリスストーリーだ。
もっとも、フレンチシネマ面目躍如と言うこともできるほどの遣る瀬無さを堪能できるのは保証されている。
しかし、
冷静にこの復活フィルムノワールを仕分けしてみると、最後に残る核は「罪悪感」。
警察内部の腐敗、不倫など今時どこの国でも珍しいことではない。
サイコキラーを無法に殺処理するのも遠くハリー・キャラハンに遡る。
アル中警官の失態は本邦でも新聞をにぎわせてくれる。

不倫中に家族を失う運命の皮肉。
主人公(ダニエル・オートゥユ)はこの時点から償いきれない罪を負う。
実は警察組織は特別な背景ではあるが必須背景ではない。
彼の魂が常に消滅を願い地獄をさ迷うのがテーマだった。

この状況は「パイソン 357」との決定的違いであり、
伝統的フィルムノワールとの決定的隔たりでもある。
世にプロフェッショナルが稀になってきたのと並行して、様式美も消えかかっている。
フィルムノワールの様式に偽装したラブストーリーと言い切ってしまうのは酷なのか?
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