最後の決闘裁判 (2021)

文字数 1,043文字

【ベンが戻ってきた、よかった。】 2021/10/19



リドリー・スコット監督、80歳を過ぎても全くパワーが衰えていない。
「エイリアン(1979)」で出会って以来話題作と言えばそこにリドリー監督がいた、かれこれ40年以上僕はリドリー作品に絶対的信頼を置いている。
そこに僕はエンターテイメントを前面に押し出しながらも、人類の生き様に寄り添う心優しさを感じる。そんな娯楽大作の中にもグローバルな問題を提起してきたことも多い、なかなかの曲者でもある。

今シネマでは「レイプ犯罪」を告発する勇敢な女性をシネマに再現した、時代は14世紀、ところはフランスである。少し前ハリウッドでのセクハラ告発ムーブメントがあったが、繰り返すが王政国家の中で一般庶民がその人権すら認められていない7世紀前の女性人権を象徴する実話事件がテーマになっている。
リドリー・フィルムであるから、たとえ「裁判」と云う蛇足邦題に惑わされることなく、本作はエンターテイメント・サービスに満ち溢れている。

無骨だが実直な騎士(マット・デイモン)の妻(ジョディ・カマー)が夫の友人の騎士(アダム・ドライバー)にレイプされる。
そこから名誉回復のため双方が裁判で争い、最後に決闘するというのが荒筋であるが、
リドリー監督はそこに至るエピソードを三人の視線で三通り再現して見せる、三回観れることを喜ぶか、煩いと嫌うかは顧客次第だが、同じシーンを微妙に違えて演出する心憎さだった。

こう言ってしまうと辛気臭い裁判ものと誤解されるかもしれないが、決着の決闘シーンが、今まで未見の壮絶さ、きっちりと西洋チャンバラ醍醐味も盛り込まれている。
そんな中、争う二人の領主であり国王の従弟である侯爵が、これら殺伐とした騎士道物語に現代感覚の潤いを持たせてくれる。
演じるのは久しぶりに颯爽としたマット・デイモン盟友のベン・アフレック、教養溢れる賢明な貴族が本作の潤滑油になっている。

僕はふとこんな愉しみを覚えて仕方がなかった
・・・マット・デイモン、アダム・ドライバー、ベン・アフレックをガラガラポンして、別の役を演じさせる愉しみをだ、
三人の誰もが三人の役をできる、想像してひとりニンマリとしていた。
閑話休題、
過去のリドリー・フィルム西洋時代劇作(グラディエーター、ロビンフッド、エクソダス)とは一味違ったメッセージ色の強い良作だった。

老婆心:
現代日本も「決闘」でもって正義を神の判断にゆだねるしかないのだろうか?  近年の著名人レイプ事件の醜さを思い出してしまった。
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