消えた天使 (2007)

文字数 689文字

【救いはあるのだろうか?】 2008/1/13



アンドリュー・ラウ監督ハリウッド進出第一回作品だそうな。
上等な出来上がりだった。

主人公は公共安全局の監察官だ。
この名称だけではどんな仕事か想像もできない。
もっとも、「登録性犯罪者の監察」といわれても余計想像が困難になるだけだろう。

原題の「群れ」とは、彼ら・彼女ら、性犯罪者の夥しい群れを意味する。
監察官はこの群れを見守りアンケートチェックをする、ただそれだけ。
どれだけ将来の危険を予知できるのか?
ましてや危険を防止できるのか?
当然のようにこの群れは悔いることなく、自らを改めることもできない。
だからこその監察、お役所仕事といってしまえばそれまで。

キーワードにもなっている「暗い深淵」という魔物は、
覗き込む人間には、覗き返してくる、
群れに迫れば迫るほどに監察官は絶望を感じることになる、
救いなどない。

使命感の継承、ベテラン監察官(リチャ-ド・ギヤ)から
新人監察官(クレア・デインズ)への教え、
もしくは二人に芽生える師弟愛のようなものをして、心が一瞬温まるかもしれない、
が、それは真の救いではない。

シネマは捜査権のない監察官が行方不明の少女を
救出するなかでのサスペンスの形式になっている。
なぜ、どこの国の役人たちも管轄争いをするのだろうか?
そこはそれラウ監督らしく、
ひとりのスーパー小役人が活躍する鬱憤晴らしを仕組んでいるが、
それでも救いには程遠い。

サイコサスペンスと喧伝されている。
僕はそれ以上に恐怖と無力感に包まれていた。
ようやく近年、性犯罪者の管理方法を論議し始めたわが国でも、
このような暗い深淵が大きく口を開けているのだろうか。

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