おかあさんの木 (2015)

文字数 693文字

【考えさせられるシネマ】 2015/6/7



考えさせられるシネマというものがある、
いい意味でも、残念ながらそうでない意味でも。

本作は、1937年から1945年までの長い戦争の時代に生きた、一人の母親の物語。
この8年間の間に、母は7人の息子すべてを兵隊として召し上げられてしまう。
赤紙一枚で戦争に追いやられた息子たちと母親の切々たる哀しみが伝わってくる。
明らかに本作はエンターテイメントを志向してはいない。
それではいったい何を伝えたかったのだろうか?

(1)国民一人一人の戦争責任
次々と子供たちの戦死を知らされて、母が最期に「私は間違っていた、子供たちを手放すのではなかった」と後悔の念に苦しむ。
愛国の母、英霊の家などなどと称賛されながら結局は自分の間違いを反省する。
「非国民」と呼ばれる恐怖に戦争への疑問、不満に自ら口をつぐんでしまった。

(2)国家の戦争責任
中国との戦争を念頭に置いた世論作りのおかげで、好戦的な教育、躾けが根付いていた。
天皇のために戦争で死ぬことが務めであり、名誉だという価値観を作り、守った。
資源がないのに無謀な戦いを始めた。

およそ以上のことが作品の中で出てくるメッセージだった。
そこから僕らは何を受け取ればいいのか、考えさせられる。

国家の強権は個人を守るためのものと勘違いしない。
戦争を望んではいけない。
子供の命を守る手段を確保しなければいけない。

一方で、隠れた見えない対立点も忘れてはいけない。
戦争には相手の国家があり、同じように若い兵士がいて、母親がいること。

七人の息子を象徴した七本の桐の木々、
その木々を慈しみ、哀しむことで、上記の考えにつながればいいのだけど。
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