グローリー (1989) 

文字数 779文字

【重要な歴史の転換点】 2012/5/6



今般、マイコレクション(戦争シネマ)購入に際し再度鑑賞した。
23年前というと、かの国ではジョージ・ブッシュ(父)がレーガンから政権を引き継いだ年、
日本のバブル経済にもかげりが見えてきて「強いアメリカ」を前面に打ち出してきた頃だった。

一般的には当シネマは南北戦争の雌雄を決した黒人最初の連隊を描いたとか、
デンゼル・ワシントンが黒人として二人目のアカデミー賞(助演)を獲得したとか、
黒人賞賛シネマと思われがちだ。
加えて、モーガン・フリーマン、アンドレ・ブラウアーはじめ
黒人俳優の若き姿が数多く見られる。

しかし、黒人連隊の現実は平等の見地からは程遠いお寒い限りだった。
将校は白人、その将校も仲間から疎んじられる、黒人連隊の将校というだけで・・・。
軍隊でもっとも大切な兵站からも切り離されて、装備、食事も差別される。
近年スパイク・リー監督の「サントアナの奇蹟」の中でも同様な差別が
第二次大戦中当たり前とされていたことが描かれている。
逆説的でも、皮肉でもなく本作で圧倒的存在感と共感を覚えたのは
若き連隊司令官ショー大佐だった。

マシュー・ブロデリックの好演もあって、裕福で教養豊かで責任感の強い
リベラリスト青年の苦悩が全編に滲み出ていた。
解放奴隷の差別される痛みを理解しようとするリベラリストの温血と、
軍隊の規律を守ろうとする冷血との葛藤。
ボストンからの親友であるインテリ黒人を新兵として接する自己欺瞞の揺れ動き。
部下の名誉を守るため、敢えて「死」を選択する最後の総攻撃。

そこには白人主導による「強いアメリカ」が理想とされていた。
まだまだ、黒人はその理想の元に殉ずるべきものとの傲慢が見える。

あれから四半世紀近く経過して、
奴隷出身ではないがアフリカ系アメリカ人が大統領になった。
今回再観してみて改めて歴史の大きな流れを感じている。

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