ボーダーライン (2015)

文字数 706文字

【麻薬戦争のシリアスな現実】 2016/4/11



日本版タイトル「ボーダーライン」は配給社としては、
してやったりかもしれないが、僕にはピンとこない。
その宣伝コピー曰く「その善悪にボーダーはあるのか」には苦笑してしまうしかない。
メキシコの麻薬戦争は控えめに言っても何でもありの残虐行為がまかり通っている。
いまさら、「善悪」を問うレベルなんかではない。

本シネマはベニチオ・デル・トロのビーストと
エミリー・ブラントのイノセントを愛でることによるカタルシスを愉しむべし。
オリジナルタイトルのとおりデル・トロは
目の奥に「無」を湛えた哀しい暗殺者を名演していた。

暗殺者を利用して麻薬戦争のカオスを終息させ、
旧態の秩序回復を図りたいアメリカ政府の本音が全編の伏流になっている。
CIA,デルタフォース崩れの戦争プロが、このミッションを支援する。
エミリー・ブラント演じるFBI捜査官は、さしずめアメリカ国民の良識であり、
それは偽りの善意でもある。

さほどに、メキシコとの麻薬戦争は解決の糸口が見つからない。
アメリカTVドラマシリーズ「ザ・ブリッジ」や、
小説「犬の力」(ドン・ウィンズロウ)に描かれているとおり、
事態は通常の法律では対処できない。
本作でも、超法規措置が暗殺チームには付与され、FBI捜査官の幼稚な正義感を笑い飛ばす。

麻薬カルテルの恐怖と残虐性を知らせるシネマは、
いままでもこれからも続いて作られるのだろう。
しかし、その実態はシネマや、また僕の想像を絶するものであるのは間違いない。

残酷なシーンが多い、銃撃シーンが凄まじい、
だが現実はその向こうにあると思うと気が重くなる。
決してハッピーにはなれないが、貴重なシネマだった。

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