ヴェロニカ・ゲリン (2003)

文字数 650文字

【正義を定位置に】 2008/2/3



正義の定位置なんてどこにもないのだと、痛感した。
その意味でまっとうな正直なシネマ、最後まで静かなパッションが流れていた。

「ペンは剣よりも強し」、
いまさらながらジャーナリズムのミッションを簡潔に表現している。
これは単なるお題目なんかではなく、ヴェロニカのような犠牲のもとに築き上げられた「誓い」だ。
映像メディアと違って新聞記事はレポーターが介在するだけに、記事はその人物の使命感に大きく左右される。突き詰めれば、本物のジャ-アナリストか否かはこの一点で振り分けられる。
本ストーリーに登場する多くの記者仲間たちをヴェロニカが無視していることがその証である。
ヴェロニカは使命感を確信していた記者だった。
いや僕は、記者たるものすべてが使命感に命を賭けろといっているわけではない。
どの分野にも英雄が存在するというお話である、結局は。

1990年代のアイルランドは無法状態のように思えた。
多数の犯罪組織が凌ぎ合い、IRAテロ混乱の中、「正義」は機能していなかった。その正義を普通の市民のもとに引き戻したのが、ヴェロニカのペン、死を賭したペンの力だった。

何度も命を狙われ、暴力を振るわれながら彼女を守れなった警察機構のふがいなさ。
その無力感を一掃していたのが、ヴェロニカ惨殺現場に集まってくる人々を真上から俯瞰するシーン。
市民の抗議を象徴し、怒りを結集し、正義の位置を正していく予感に包まれた名シーンだった。

さて、ペンの力も持っていない僕はどうすればいいか?
大きな問題が残された。
ワンクリックで応援できます。
(ログインが必要です)

登場人物紹介

登場人物はありません

ビューワー設定

文字サイズ
  • 特大
背景色
  • 生成り
  • 水色
フォント
  • 明朝
  • ゴシック
組み方向
  • 横組み
  • 縦組み