トリプル9 裏切りのコード (2015)

文字数 870文字

【あぁ 風と共に去りぬ アトランタ無情】 2016/6/21



シネマは作り物だとはわかっていても、一般常識に近いものをお勉強することが多い。
例えば、本作の舞台のジョ-ジア州アトランタは全米でも有数の犯罪多発都市だということなどだ。
その原因は貧困(失業率の高さ)だと指摘されている。
作品の中でも、全身タトゥーの若者が荒廃したビルにたむろしたり、
小学校に行く年頃の少年がガンを手にしていて刑事に突っ張っていたりする。
物語はそんな何でもありの犯罪都市の裏社会を牛耳るロシアン・マフィアが
アトランタ警察官を脅迫して銀行や政府機関を襲撃させる。
そのタイトルが「トリプル 9」、
警官が負傷した際の無線コードで全警官が現場に殺到することになる。

トリプル9の説明は予告編でも喧伝されていた シネマのキーワードなのだ。
トリプル9を上手く利用して重大犯罪を実行するという筋書きは、
しかしながら、あまりにもオーソドックスだろう。
僕はあんまりその安易なプロットに期待していなかった。

見たかったのはケイシー・アフレックその人。
「ゴーン・ベイビー・ゴーン」以来の優男から、近年とみにマッチョな俳優に変身しているところに着目している。
そして、映像化困難な「ザ・ロード」を哀しくも見事に再現してくれたジョン・ヒルコート監督の近況も知りたかった。

そこで思いがけず出逢ったのは、きわめて上質の、
それでいて皮肉に満ちたポリスストーリーだった。
キャスティングを絞り込んだ賢い創りは集団アクションが陥りがちな没個性化を免れた。
犯人グループ5人、ロシアンマフィア1人、良い警官2名でほぼ足りる構成、
スピード感あふれる急展開に対応していた。
キーワードの「トリプル9」、
警官の負傷(死亡)は襲撃作戦のみならずシネマ全体のアトランタの現状を映し出していた。

脇を固める犯人グループリーダーであり、
ロシアンマフィアの連絡係をキウェテル・イジョフォー、
ロシアンマフィアの女親分をケイト・ウィンスレットが演じて作品の重しになっていた。
もっとも、ケイトだと気づかなかったのは僕の不覚、
よくやるよケイト。

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