怒り (2016)

文字数 544文字

【団体演技金メダル そして個人も金】 2016/9/17



日本シネマ界を担う俳優たちの金メダル演技にただただ圧倒されてしまう。
そして李相日監督は吉田修一原作の「悪人」をはるかにしのぎ、
本作を重層的に完成させていた。
もっとも、重層的なのは原作の手法でもあるが、
素材そのものが映像されることで予想以上にその効果が洗練されていた。

すなわち、整形手術で顔を変えた逃亡殺人犯を三通り(三人分の男)の顔で
観客に提示してみせる。
VFXというまでもなく、このような三人の俳優の特徴をミックスした指名手配写真は、
到底小説(文章)の及ぶところではなかった。
原作の手法だった三か所の舞台(東京、千葉、沖縄)の性急なカットバックも、
シネマではむらない編集でより一層臨場感が高まっていた。

繰り返しになるが、
本シネマでの俳優たちの稀な高レベルの競演が計り知れない高みに僕を誘う。
宮崎あおいさんの慟哭の涙、
広瀬すずさんの恐怖の涙、
妻夫木聡さんの自己侮蔑の涙、
渡辺謙さんの父性愛の涙、
そして、
松山ケンイチさんのあきらめの涙、
綾野剛さんの不信の涙、
森山未來さんの拒絶の涙。

チーム全員の演技を総合して団体金メダルは当然だったし、
それぞれも皆金メダルだった。

なかでも、沖縄の涙は哀しい、
この涙が「怒り」に昇華される日は遠くない。

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