ゼロの未来 (2013)

文字数 683文字

【相変わらずの皮肉屋さん】 2015/5/20



ネットビジネスの複合企業体で働くプログラマーが主人公。
演じたクリストフ・ヴァルツは、冒頭とエンディングで裸になっている・・・人間生まれて死ぬときは裸だってことか?

この主人公、自分のことをWe(我々)という主語でしか喋ろうとしない。
組織の中で自己を埋没させて生きていくための保身なのだろう。
パーティーは嫌い、刺激食物は受け付けない、他人との関わりを避ける、無論異性との付き合いなんて・・・・。
一歩外に出れば、彼のまわりには、騒々しい広告の世界、ネットでつながらないと落ち着かない市民の波。

近未来SF設定らしいけど、どうやら今の世界、いやいや今の日本をメタファーしている。
便利な世の中になったという喜びの代償として人々は孤独に苛まれていく。
働き過ぎの若者、人生の達成感に餓える老人たちの行き着く先はどこにあるのか?

「ゼロの定理」を解く業務命令は、そんな人間たちへの大いなる皮肉でしかない。
「ゼロ」はといえば、宇宙の誕生と消滅につながるものだというシーンも登場してくる。
その宇宙の摂理は神の崇高な意思であることへの反発が随所にみられる。
主人公の住み家は、戒律のため焼け壊れた教会跡、そこで彼はゼロの定理を構築しようとする。
その教会を徹底的の破壊する主人公、破壊したはずのイエス像から光る視線、
やはり神の意志が存在するという皮肉なのだろうか。

老婆心:
バーチャルのアダルトサイト体験で登場するのが、典型的ハリウッド版南の島、水平線に沈む夕日、そそり立たつ崖に囲まれた入江・・・。
バーチャル用の奇妙なフイットスーツとの対比が愉快だ。
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