ブリット (1968)
文字数 1,606文字
【ディーテイルの輝ける宝庫】 2007/6/13
このところ、ポリスアクションシネマに接するたびに、
なんともいいがたい寂寥感につつまれてしまう。
これが決して面白くないわけではない。
このごろのストーリーは練りに練ってよく構成されている、
結末なんか予想しようという気にもなれないくらい展開も速い。
ポリス側も複雑な人間関係で、
下手すれば誰かが裏切り者だったりに驚いてもいけないくらい、
善悪が複層になっている。
裏返しとして、犯人側もバラエティに富んでいて、
悪として切り捨てることが出来ない状況にはまって、結構うろたえることすらある。
双方とも装備は近代化され、近未来の絵空事科学が明日にでも現実となる勢い、
人間個人の限界が見える。
乱暴に言うと、シネマ素材として永久性を持つがゆえにポリスアクションは進化しすぎた、
結果嘘くさくなった、リアリティが希薄になった。
シネマ製作の総力、優秀な能力を結集した結果、
今ポリスアクションシネマは皮肉な方向に進んできてしまった。
その反論として《ブリット》のことを持ち出したくなかったのだけど、
今の時点で、この名作を振り返って確認しておきたかった。
《ブリット》は僕の青春の指針だった。
《ブリット》はリアリティを僕に教えてくれた。
本シネマは39年前の製作
今生きていればクリント・イーストウッドとおなじ喜寿77歳になっている
マックィーンのスターシネマだ。
彼が、スタントなしでカーチェイスをこなしたという話題、
いわゆる元祖カーチェイス、シスコの街中を暴走したという伝説が先行しているが、
このシネマはポリスアクションのディーテイルの輝ける宝庫だ。
幾分個人的バイアスがかかってはいるが、
僕の人生の指針にもなったディーテイルの数々をこの際、拾い出してみたい:
■刑事は常にチームで動く、最後までこのチームワークは崩れなかった。
■恋人との夕食のときも、所在を相棒に知らせるブリット。
そう、当たり前の捜査活動をいちいち映像にしてみせてくれるディーテイルが、
本シネマの骨になっている。
■ペイズリーの茶のパジャマ、ミッドナイトブルーのスーツに
やはりペイズリーのブラウンのタイ。
■茶のヘリンボーンのジャケットに高彩度のブルーのタートルネックッセーター。
そう、ブリットは、ブラウンとブルーのコーディネーションを
僕にファッションテーマとして与えてくれた。
■初めて眼にした「テレビディナー」のパッケージ、
ブリットが一週間分を買い込んだのはコンビニショップだったっけ。
■犯人警護の病院で供せられる病院食に感謝するブリット。
そう、人間を描くには食事が一番、朝はインスタントコーヒーを作るのに
ヒーターをカップに直接放り込んでた。
■駐車してキーでロックし、ドアノブを引いて確認するブリット。
■車を壊し、警察車も出払ったので恋人の車で捜査に出かけるブリット。
そう、カーチェイスの派手さとは対照的に、
日常での車のエピソードはさりげなくブリットの人間性を描いている。
縦列駐車を一発で決めて得意そうにしていると指摘する友人もいる、
さもありなんである。
■実は近代装備がこのシネマでも登場している、ドラム式写真電送器。
今では到底信じられないローテクだが、当時(39年前だ)僕には近代捜査道具として
感動したものだ。
これらのディテールの蓄積が本シネマに、
そしてブリット警部補に最大のリアリティを与えている。
万が一、未見のシネマファンは、今に通じるこの膨大なリアリティの宝庫を確認して欲しい。
39年前のリアリティだとはとても思えないはずだ。
僕が、しかしながら、ほんとにみて欲しいのはあのマックィーン笑い。
ちょっとだけ口の端を上げてにこっとした眼の表情になる、歯なんかは見せない。
本シネマでは、恋人(ジャクリーヌ・ビセット)とのディナーの席で一瞬見せてくれる。
時々、マックィーン笑いに会いたくなる、今日もそんな日だった。
このところ、ポリスアクションシネマに接するたびに、
なんともいいがたい寂寥感につつまれてしまう。
これが決して面白くないわけではない。
このごろのストーリーは練りに練ってよく構成されている、
結末なんか予想しようという気にもなれないくらい展開も速い。
ポリス側も複雑な人間関係で、
下手すれば誰かが裏切り者だったりに驚いてもいけないくらい、
善悪が複層になっている。
裏返しとして、犯人側もバラエティに富んでいて、
悪として切り捨てることが出来ない状況にはまって、結構うろたえることすらある。
双方とも装備は近代化され、近未来の絵空事科学が明日にでも現実となる勢い、
人間個人の限界が見える。
乱暴に言うと、シネマ素材として永久性を持つがゆえにポリスアクションは進化しすぎた、
結果嘘くさくなった、リアリティが希薄になった。
シネマ製作の総力、優秀な能力を結集した結果、
今ポリスアクションシネマは皮肉な方向に進んできてしまった。
その反論として《ブリット》のことを持ち出したくなかったのだけど、
今の時点で、この名作を振り返って確認しておきたかった。
《ブリット》は僕の青春の指針だった。
《ブリット》はリアリティを僕に教えてくれた。
本シネマは39年前の製作
今生きていればクリント・イーストウッドとおなじ喜寿77歳になっている
マックィーンのスターシネマだ。
彼が、スタントなしでカーチェイスをこなしたという話題、
いわゆる元祖カーチェイス、シスコの街中を暴走したという伝説が先行しているが、
このシネマはポリスアクションのディーテイルの輝ける宝庫だ。
幾分個人的バイアスがかかってはいるが、
僕の人生の指針にもなったディーテイルの数々をこの際、拾い出してみたい:
■刑事は常にチームで動く、最後までこのチームワークは崩れなかった。
■恋人との夕食のときも、所在を相棒に知らせるブリット。
そう、当たり前の捜査活動をいちいち映像にしてみせてくれるディーテイルが、
本シネマの骨になっている。
■ペイズリーの茶のパジャマ、ミッドナイトブルーのスーツに
やはりペイズリーのブラウンのタイ。
■茶のヘリンボーンのジャケットに高彩度のブルーのタートルネックッセーター。
そう、ブリットは、ブラウンとブルーのコーディネーションを
僕にファッションテーマとして与えてくれた。
■初めて眼にした「テレビディナー」のパッケージ、
ブリットが一週間分を買い込んだのはコンビニショップだったっけ。
■犯人警護の病院で供せられる病院食に感謝するブリット。
そう、人間を描くには食事が一番、朝はインスタントコーヒーを作るのに
ヒーターをカップに直接放り込んでた。
■駐車してキーでロックし、ドアノブを引いて確認するブリット。
■車を壊し、警察車も出払ったので恋人の車で捜査に出かけるブリット。
そう、カーチェイスの派手さとは対照的に、
日常での車のエピソードはさりげなくブリットの人間性を描いている。
縦列駐車を一発で決めて得意そうにしていると指摘する友人もいる、
さもありなんである。
■実は近代装備がこのシネマでも登場している、ドラム式写真電送器。
今では到底信じられないローテクだが、当時(39年前だ)僕には近代捜査道具として
感動したものだ。
これらのディテールの蓄積が本シネマに、
そしてブリット警部補に最大のリアリティを与えている。
万が一、未見のシネマファンは、今に通じるこの膨大なリアリティの宝庫を確認して欲しい。
39年前のリアリティだとはとても思えないはずだ。
僕が、しかしながら、ほんとにみて欲しいのはあのマックィーン笑い。
ちょっとだけ口の端を上げてにこっとした眼の表情になる、歯なんかは見せない。
本シネマでは、恋人(ジャクリーヌ・ビセット)とのディナーの席で一瞬見せてくれる。
時々、マックィーン笑いに会いたくなる、今日もそんな日だった。