エンパイア・オブ・ライト (2022)

文字数 662文字

【40年後 希望は叶ったか】 2023/2/24


巨匠 サム・メンデス監督が1980年代を懐かしむプライヴェートフィルム(のようなもの)だった。名優オリヴィア・コールマン、新人マイケル・ウォードがその想いにしっかりと応えている。
40年前のイギリス、斜陽とはいえかっての名門劇場エンパイアが舞台、従業員のアナログな働き方、もはや使用されていない客席の数々、「ブルース・ブラザーズ(1980)」、「炎のランナー(1981)」などの名作すらもの哀しい。
どうやら脚本・製作も受け持っているメンデス監督の青春物語らしい、トリニダードトバゴ出身の黒人青年への差別、ジェンダー提起、家庭崩壊の現実をシネマは愛おしむかのように再現する、その背景にあるサッチャー強権政権への批判が見え隠れしている。

映画産業が変化を余儀なくされるように大英帝国もこのあと身を切る変革が待っている、そんな時代にも未来をあきらめなかった黒人青年、彼を愛しセクハラを伴った男性社会に精神を病みながらも希望を捨てることなく、タフに前向きに生きようとする主人公。
見えない敵に屈することを許さない強靭な精神がシネマ全編に静かに流れていた。
コールマンとウォード、新旧の技比べが観どころではあるが、1980年代を象徴したような異例の緩やかさには正直なところ肩透かしを食らった。

それでも、
同じ40年間を生き抜いた同志として、登場人物そして製作スタッフすべてに深く感謝したい。
あの頃、時間はゆっくりと流れ、優しい仲間たちにかこまれ、希望があった。
そんなことを思い出した。
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