イングロリアス・バスターズ (2009)

文字数 747文字

【頭皮狩り懸賞部隊】 2010/8/12



タランティーノ監督がこれほどまで正統派になった、
あるいは正統派になれることにびっくり。
いまや残酷シーンはタランティーノだけの十八番でもなくなってる。
実際本シネマでは「頭皮剥ぎ」くらいしか新鮮な映像ショックは無く、
どちらかといえば殺戮を標榜している割には暴力描写は常識的だった。

そしてタランティーノ流先鋭化に取って代わったのが
壮大なコンセプチュアルメッセージ【復讐記号】。
ユダヤ系アメリカ兵が《ナチス》を殺してその皮を剥ぐ。
兵士たちは剥いだ生皮をベルトにつるしていた。
見せしめのハーケンクロイツを額に刻む。
こんな復讐の単純さに誰しもが唖然としてしまう。

敵の頭皮を持ちかえると懸賞金がもらえるのは
アメリカ開拓時代にあった歴史的事実らしい。
つまりこれはアメリカ先住民の慣わしではなく商業主義白人の発想だった。
近々シネマ完成予定の《ブラッド・メリディアン》は
インディアンの頭皮を狩る白人部隊の物語だ、余談だけど。

イングロリアス・バスターズとはよく名づけたもので、
ユダヤ民族の復讐だけではなく、そこには冷徹に計算された
ナチ頭皮狩り懸賞部隊が見えてくる。
復讐も皮一枚の単価(@)で評価される。
報酬の無い、あるいは報酬を禁じられた敵には《記号》を残す。
特殊部隊の意気込みが理解しやすい・・・
民族、国家のために命を賭けるという嘘くささはここには無い。

それにしても相変わらずアクションシーンは凝っている。
ヒットラーを含めたナチス幹部一掃殺戮シーンはじめ随所に
タランティーノ印満載だった。
そしてシネマの格が一回り大きくなっていた。

国のために戦うアメリカ市民の変わりに
民間軍事専門企業が戦争を請け負っている現代、
グロリアス・バスターズすら絵空事になった、
タランティーノお見事。

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