マーウェン (2018)

文字数 689文字

【心の闇を忖度する】 2019/7/19



本シネマも「事実に基づいている」という注釈が冒頭に述べられる。
最近とみに増えてきたのが実話ベースのシネマ。
本来シネマはオリジナルであれ…と思うものの、映画人の力不足がその原因なのか、
はたまた原作(フィクション)の枯竭のせいなのか? 実話頼りの傾向が多いような気がする。
もっとも 、「事実は小説よりも奇なり」という名言の通り、数奇な人生を歩む人たちは多い。

本物語は、ヘイトクライム(暴行事件)の後遺症で心身に異常をきたしたイラストレーターが主人公。
暴力の影響でそれまでの記憶を失い、美術の才能も消えてしまったマーク、
演じるスティーブン・カレルの演技がまたもや前代未聞、彼の進化は止まっていない。

障害の残った身心で取り組むのが、
フィギュアを駆使したアメリカ陸軍航空大尉とナチスの戦争ごっこ。
写真を撮りかさねて、個展を開くまでの才能を取り戻している。

しかしその一方で、その稚拙な戦闘物語のなかに自己を投影し、
「強い自分」の殻の中にこもっている。
そんな彼に暴行グループと対峙する裁判が迫ってくるなか、
愛情を感じる女性にも巡り逢う、
主人公の公私にわたる危機をどう乗り越えるのか?

本シネマの大きな特徴は、
フィギュアの世界に主人公が入っていき、スクリーンに人形劇が演じられること。
生身の登場人物をコピーしたフィギュアを俳優たちが演じる、不思議な感覚になる。
この人形劇と、実社会の憂鬱がシンクロしながらエンディングに突き進んでいく。

もしかしたら、
僕も何かのストレスを知らないうちに何かに向けて発散し、
昇華して生き延びているのかな?
不思議な既視感を覚えた。
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