ミスト (2007)

文字数 627文字

【機嫌悪し】 2008/9/21



いつものように予備知識なしで観終わった後、
キング作品のシネマ化成功例監督作だと知って意外な思いだった。
たまたま本原作は未読だったが、その内容はこの結果から推して知るべし。

キング原作はジャンルもひろいが、出来上がり具合もさまざまだと思っている。
特に怪奇現象ジャンルはその質、振幅が大きい。
この度は、名監督をもってしても成し遂げられなかった壁があった。

超常現象の映像化には限界があり、
肝心の物体Xの姿を見せないという姑息な手段をとらない限り、
姿かたちを目にした時点で観る側の興味は減少する、まず増幅はしない。
まして近年のVFXはほぼ人間の想像力を網羅してしまった以上、
ゴジラに驚くようなわけにはいかない。
異次元の生物との戦いは陳腐以下の仕上がりだ。

それなら、
敢えてシネマに託した彼らの想いはなにか?
ラストシーンに込められた皮肉なメッセージを伝えたかったからなのか?
僕はとっさに、
太平洋戦争での特攻隊生き残こり隊長や沖縄戦で自殺を強要した軍部を思いついた。
人間は弱い、危険に直面して正常な対応などできない・・との伏線も台詞にあった。
おそらくは、「霧」の中で人間は方向を失うように、
霧は人の生きる気力も奪うのだろう。

ラストシークエンスで霧の中に迷う主人公の苦悩は象徴的だった。
欠けていたのは精神に霧を寄せ付けない、冷厳な合理性。
望み得ない幻なのかもしれない。
これが僕らの実態である。

痛いところを突かれると、普通誰も機嫌はよくない。
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