荒野のストレンジャー (1972)

文字数 667文字

【名無しのミニマリズム】 2009/4/27



監督としては初のウェスタン、時代はウェスタンには冷たくなっていたが。
だが、本シネマに漲るエネルギーとみずみずしさはクリントが過去に鬱積したウェスタンへの想いの発露である。
ウェスタンに限らず、クリントは観客の知性を信じているから、セリフでの冗長な説明を極力嫌う。とはいえ、このシネマは冒頭からストレンジャーたる主人公が、立ち寄った町の住民を、いきなり蹂躙し始める。
とてつもない早撃ちのガンマン対暴力の支配に為すすべの無い町民・・・確かに今までのウェスタンとは異なる。
一方では、ストレンジャーの記憶らしきカットインが頻繁に現れる。
そこでは町の保安官がリンチで殺され、ただ見守る町民達の姿。観客は「これは復讐劇かな?」と思い至るが、最後までそのストレンジャーとの因果関係は伏せられたままである。
何しろ、ストレンジャーは何度聞かれても名前を名乗らない。
記憶に出てくる保安官がクリント似であることから観客はあらぬ想像を逞しくする・・・もしかして?
このように、ミニマムな構成とシンプルな街のセットとの相乗効果、加えてサスペンスの香り豊かな演出によって、暴力と人間の本質を暴く異色ウェスタンとなっている。
そこには、ハッピーエンドも、謎解きも無い。
クリントの雄姿を見たい僕には、ちと辛い作品だが、今までのウェスタンに対するアンチテーマとして理解した。
さすが、マカロニとTVのウェスタンで苦労し我慢したクリントならではの試みだ。

ネタバレ: 最近の資料によるとストレンジャーは保安官の弟だそうだ・・・なるほど。
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