SHE SAID/シー・セッド その名を暴け (2022)

文字数 845文字

【内部告発だからこそのオーソドックス】 2023/1/19


「スキャンダル(2019)」と同じセクハラがテーマだが、作り方は全く異なっていた。こちらはニコール・キッドマン、シャーリーズ・セロン、マーゴット・ロビーの世代別美女を配したエンタメ志向フィルムだったが、時代共感を持つまでには至らなかった記憶がある。
本作でもジェンダーイシューとして誰にもわかりやすい男から女へのセックスハラスメントを 告発側の記者(女性二人)の目線で丁寧に追いかける、執拗と言ってもいい展開が際立つ。
製作にブラッド・ピットの名前があるところからも本作のシリアス度がうかがえる。
マリア・シュラーダー監督がドイツ出身であること、主演のキャリー・マリガンが英国人であること、ハリウッドの暗部を抉り出すための周到な準備だったのかな。
もう一人の記者を演じたゾーイ・カザンも地味な実力者、本作はハリウッドの告発と同時にこれから立ち向かうジェンダー問題への真摯な決意をにじませていた。

シネマ導入パートが一瞬不可解であるが、そのあとは時系列にニュー・ヨーク・タイムズの特別チームの取材がコツコツと描かれ、記者二人の家庭(子供たちを含め)も細部に紹介されていく(不可解は後半でしっかりと回収される)。
セクハラ被害者一人一人に取材する過程が本作の観どころになっている、屈辱と怒りの持っていきどころがない被害者女性に寄り添う 記者、職業を超えたジェンダーの闘いはここに見事に再現されている。

近年、この手のジャ-ナリスト天晴れ物語りが絶えることがない、しかしそれはハリウッドのでのお話であり日本を顧みればお寒い限りだ。
日本代表ともいえる「新聞記者(2019)」は高い評価を貰った告発シネマであるが、フィクションの枠の中でのお話でしかなかった。
源流をたどれば、日米のジャーナリストの質の差に行きつく、日本のジャーナリストが真実を露にできないのであれば今後日本で本物の告発シネマは期待できそうもない、とても残念なことではある。
ワンクリックで応援できます。
(ログインが必要です)

登場人物紹介

登場人物はありません

ビューワー設定

文字サイズ
  • 特大
背景色
  • 生成り
  • 水色
フォント
  • 明朝
  • ゴシック
組み方向
  • 横組み
  • 縦組み