4ヶ月、3週と2日 (2007)

文字数 762文字

【精神の目覚めと独立】 2008/10/19



ルーマニア共産主義政権下のお話とくれば、
どうしてもチャウシェスク独裁警察国家、
悲惨な民衆という図式が頭に浮かぶのは、
これまた民主主義の名の下にマスコミ管理された、
おとなしい日本人の発想典型かもしれない。

一方では
ふと、彼らと僕らもそんなに変わらないのじゃないか・・・って。
そう思ってしまうのも、
本シネマがチャウシェスク独裁時代の自由が制限されたかのように思える状況を、
否定しているわけでもなく、といって賛美してることもなく、
歴史事実として淡々と描いているからだ

この物語の時代を推察すれば、その頃日本はバブルの真っ只中だった。
物語の皮相的テーマである「人工中絶」は、おそらくバブル時の日本では話題ランキングに縁のないものだったろう。
だからといって、ルーマニアの女子大生が文化的に後進レベルだとも結論できない。
このテーマは人類永遠のものではないだろうか、時を超え、人種、国を超えての。

本シネマの本質的テーマは、きわめて普遍的なものだ。
「一人の女性の精神の目覚めと独立」。

親友を助けるというヒロイズムに酔ってしまう主人公。
トラブルに際し自己愛と自己弁護に終始する親友への失望。
体制に組み込まれ、安寧をむさぼる大人達への苛立ち。
あまつさえ、自分の意見を持とうとしない腰抜けの恋人への訣別。

いやはや、バブル日本にも、
いや自由主義と標榜する戦後日本にも飽きるほどにあった青春の葛藤だ。

ルーマニアの夜の暗さが際立っていた。
非日常的、様式的カメラ構図と対照的なリアルな執拗な撮影時間。
主人公の憤りを増幅させるかのような多数のノイズが映像に重なって、
いやがおう鬱陶しい。。

そこには今現在の鬱積した思いさえ感じられる。
暗い夜にも明るい夜明けがある、必ず暁はやってくる。
たとえ時間がどんなにかかろうとも。
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