居酒屋兆治 (1983)

文字数 636文字

【煌めく日本映画の名残】 2008/3/20



木村撮影監督の絵がさりげなく美しい,
降旗監督の気配りが嬉しい。
こんなに大勢の豪華キャストがシネマ作りの楽しさを如実に証明している。

25年前の作品、
当時決して気づかなかった本作のテーマを今しみじみと感じ入っている。
秘蔵DVD BOXの中でひっそりと寝ていた本作をあえて取り出したのは、
語ることもない他愛ない理由から。
でも、観終わったいま、僕の心は何やら苦い想い、
しかし飲み込めるほどの柔らかさは持っている苦い想いに充たされている。

貧しさから愛を遂げられなかった若い二人(健さん、大原麗子)、
その愛のトラウマに生涯囚われ続ける女、
実直と優柔不断の矛盾の中、それでも誠実に生きようとする男、
男をそばでしっかりと見守る気持ち強い女房(加藤登紀子)、
お決まりとはいえ 味のある親友(田中邦衛)、
これまた定番の嫌味なかたき役(伊丹十三)、
そして「健さん組」といわれる常連に加えての、特別・友情出演者たちの数々。

日本映画が煌めいていた頃の名残がこのシネマにはあった。

当時の僕がそれを感じられなかったのはその時の事情、
仕方のないことだろう。
驚いたのは、2008年の今、
僕の歩んできた人生にシンクロする情緒を本作に発見したこと。
世はシネマにつれ、シネマは世につれ・・・と思っていたが、
普遍の、すくなくとも四半世紀生きる真理があった。
またも健さんの生き方に魅了されなおしてしまった。

少し遅くなりましたが、
2月16日、お誕生日おめでとうございました。
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