笑いのカイブツ (2023)

文字数 727文字

【魂の演技に、心が縮んだ】 2024/1/10


「ツチヤタカユキ」さんのことを全く知らないまま、本シネマを観たことが、そもそもの間違いだった・・・という批判もあろうが、ぼくはいつも予備知識なしでシネマそのものを感じ取るようにしてきた、今回もだ。

とはいっても、モチーフや主人公を想像するくらいの感性は持っているので、お笑い界の異才を描いた物語だろうくらいは予期していた、それ以上に主演の岡山さんを楽しみにしていた。
「ツチヤタカユキ」さんのことは一切知ることもなかったことは前述の通りだが、岡山さんのキャスティングは大正解だったのだと思っている、実在の現役作家を、それもドキュメンタリーでも表現できそうもない実像を文字通り赤裸々に演じてくれた。

「人間関係不得意」というキーワードが全編哀しくも強烈に響き渡る。岡山さんが魂を込めるほどに、「ツチヤタカユキ」さんがぼくの中で壊れていく。
パンツ一枚でネタをひねり出す、レジェンドの称号を獲得して呆然とする、会社勤めができない、そもそも挨拶ができない、自分の才能に酔いしれる、他人を見下す、そしてみんなからはじき出される、世の中からも。
こんな生き方をしたら、そうなることは誰でも知っているから誰もそんなことはしない。
それでも「ツチヤタカユキ」さんは、そうしない。
酒におぼれ、ケンカを売り、川に飛び込む。

岡山さんが見せてくれた「ツチヤタカユキ」さんは、きっとそのとおりの人なのだろう。
そうとしか思えない、そう感じたときぼくは息苦しくなる、役者が一人の生きざまを再現する魂の力に膝をついてしまう。

シネマを観ることって楽しいものだよね、たとえ哀しい物語でも・・・観終わってそんな想いに絡まれたままだった。
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