一月の声に歓びを刻め (2023)

文字数 659文字

【大声で泣きながら叫んでみたい】2024/2/9


「幼な子われらに生まれ (2017)」の三島監督であれと祈りながら拝見した。
「ぶどうのなみだ(2014)」や「ビブリア古書堂の事件手帖(2018)」にはならないでね・・・という反面の祈りも込めて。

昨年から続いている日本シネマの快進撃が本作でも途切れることなかった、つまりは名作ということだ。
オムニバス形式だということも知らず、いつものように事前情報なしで拝見したが、オムニバス三作ともに工夫された映像とキャストに魅了される。

①カルーセル麻紀さん ②哀川翔さん ③前田敦子さんそれぞれが演じる主人公たちには、心のひだに絡みつくような痛みを抱えている。
①支笏湖 ②八丈島 ③モノクロ大阪の地で、その痛み・重みに向き合い、さらに傷つき、乗り越え、昇華していく姿が描かれている。
  
幼子を早くに無くしたこと、妻の延命をしなかったこと、幼児性犯罪を受けたこと・・・三人三様の重荷、しかし人は人生を歩む中で何も重圧を感じないことはない、人生はそれだけで難儀なものだから。

「幼子われらに生まれ」で生真面目な主人公が人生の不合理に悩むのが救済だったように、心の奥にため込んだ哀しみを一気に吐き出すのも救済なのかもしれない、さっさと忘れてしまえばいいものを大事に抱え続ける人生という代物はやはり喜劇なのか。
  
物語と同じように、そうそう簡単に救済されない自分自身を思い返し、シネマのなかで鬱憤を晴らすのだった。
いつか、大きな声で泣きながら痛みを放り投げてやろう。
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