プラダを着た悪魔 (2006) 

文字数 1,009文字

【サイズ6のアヒルの子】 2007/4/22



ハイファッションに関わる人たちも馬鹿にされたものだ!
ジャーナリスト志望の田舎の秀才お姐ちゃんに、一通りブランド物を使われて、
最後「はい、さよなら」と縁切られる。
確かにハイファッション業界は、エキセントリックで普通の常識なんて通じない
摩訶不思議な空気を、皆で有難がって吸い回しているところかも知れない。

しかし、主人公(アン・ハサウェイ)が頼るアート・ディレクターの言葉
「ファッションは偉大なアート、毎日何百万人もの女性が身にまとっているから」を
全面的に支持したい。
悪魔と揶揄される伝説の編集長(メリル・ストリープ)タイプの女傑は、
実はファッション業界ではそんなに特異な存在ではない。
どっちかといえば、この傾向が強い。
感性で生死を分かち合っている組織集団のリーダーシップには
悪魔の魔力が必要なのかもしれないし、
ブランドビジネスは悪魔のささやきほど魅力に満ち溢れている。
悪魔は華やな仕事の陰につきものの孤独な人生を歩み、
悪魔を見切った主人公はジャーナリストとしてまっとうで豊かな人生が約束される
・・・確かにこの結論は、これで心が暖かくなるのだろう。
否定することは僕には出来ない。

でも、ブランドのお洋服を着て、シューズをはき、バッグを腕に抱えると、
幸せになるのも、実際の現代の女性たちだ。
虚栄なんかでなく、良質のハイファッションを愛する女性の満足のために、
ファッション業界が幾分歪んでしまうことは仕方がない。
すくなくとも、実際ファッション現場に働く女性たちは、
この前提を受け入れて飛び込んできている。
アンディの成功物語(最後にミラー紙就職)は一方でのファッション誌での
明確な失敗を認めるところにしか成立しない。

アンディは間違って白鳥の巣に飛び込んできた、サイズ6のアヒルの子だったから。
ハイファッション好きのこんな意見、間違ってますか?
と、ここまではいちゃもんでした。

これほどまでにテンポのいいサクセスストーリー、
ちょいと古いがトラボルタの《サタデー・ナイト・フィーバー》を思い出しました。
意地悪な年寄りが元気なほど、いきいきと輝くのが若者という真理を
思い出させてくれたふたりの女優。

輝くような笑顔と、皮肉いっぱいの苦笑、どちらもキレイに見えた二人の女優。
意地悪なしたたかなミランダ、
優柔不断な自分に気づかないアンディ、
ふたりの女優のサプライズ演技でした。
メリルとアンに感謝します。

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