マイ・ライフ、マイ・ファミリー (2007)

文字数 546文字

【小さな哀しみ、小さな希望、小さな喜び】 2010/2/13



原題の「サヴェージ家」だと無味乾燥だとは思うが、
反対に、邦題からだと底知れない明るさが感じられるものだ。
実にこの小品は無味乾燥と恐ろしいまでもの明るさ、
二つの矛盾に満ちていた。

ストーリーは死期近い父親の介護に巻き込まれる兄妹の物語。
身近な家族の介護や死を意識しない立場の観客にとっては
まさに無味乾燥だ。
ひとはいつか死んでいく。
その事実を理解した先にほんのり見えてくる「明るさ」は、
これまた、ひとの特権かもしれない。
諦めではなく悟りでもない、
生きていくための、ちょっと先に見える明るさ。

フィリップ・シーモアもローラ・リニーもこんな何気ない普通人の葛藤を見せてくれる。
いや、彼らだからこその演技だった。

あまりいい父親ではなかったが、死を前にした父親の境遇に悩む兄妹。
老人ホームをホテルと勘違いする呆けた父親。
兄妹にもそれぞれの人生があり、悩みを抱える。
世界共通、人類誕生以来ず~と持ち続けた永遠のテーマである。
先立つ家族にどう尊敬の気持ちを表せばいいのか?
自分たちだって幸せになる資格はあるはずだ?

深刻なシネマであることには違いないが、
それでも生きていくには前に向かうほかない。
小さな哀しみ、小さな希望、小さな喜びで、ひとは生きていく。

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