逆転のトライアングル (2022)

文字数 895文字

【自分が映るブラック・コメディ】 2023/2/28


カンヌ、パルム・ドール賞に輝く作品だけど、今一つ日本国内の番宣も控えめ、作風が日本的メンタリティーに向いていないのでは…と一抹の不安があった。
リュ-ベン・オストルンド監督は前作もパルム・ドール賞を獲得しているとのことだが僕の守備範囲ではなかったようで未見、なおさらに不安が募ったが何事も初体験は大切である、いくつになっても挑戦姿勢を忘れないでいたいものだ。

ブラック・コメディだった。
主な登場人物は怪しげなやつばかり、または嫌なヤツ、唾棄すべき奴・・・まともな人間はいない。 主人公らしいのがインフルエンサーだと自画自賛するモデル女性とひものような男(ハリス・ディキンソン好演)。
二人が無料招待で乗船した超豪華ヨットの乗客たちが、上記許しがたい面々たちという設計になっている。
民主主義に不可欠のものを製造しているという老夫婦…実は手榴弾で大儲けしたことが自慢。
「クソを売ってる」というロシア実業家、有機肥料(確かに豚・鶏の糞)で財を成し、金を動かして更に儲ける宣うロシアの資本主義者。
他の乗船客も似たり寄ったりの尊大傲岸で下品な連中だ、「金」の力を熟知しそれを欲しがる連中(ほとんどの人間)を見下す。
嵐のなかのキャプテンズ・ディナーはそんな連中を徹底的に愚弄する、映像としてもギリギリの醜悪なシークエンスだった。

そして海賊の襲撃、ヨット爆発沈没、無人島漂着となり、番宣メインの立場の逆転生活が始まる。
この手の設定は過去繰り返されている、いまさら食糧(水)確保するものが一番偉いという理解が安易だが、新鮮味もあった。
フィリピン人清掃オバサンが金持ちや高級船員を指図するのはありふれていたが、若い色男を自分のものにするところにジェンダーが 意識されていた。

下品とはいえ多数の富豪たちが遭難したのだから捜索救助があるだろう、助けを求めて誰か一人ぐらい行動を起こすだろう。
助けも来ないし助けも求めない、もしかしてこれが現実なのか。
ただ砂浜に座り込んで食物を待ち焦がれる連中、自分の姿を鏡で見た気がした、ブラック・コメディ。
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