フォードvsフェラーリ (2019)

文字数 762文字

【名優と名車と名バトルの哀しみ】2020/1/14



モータースポーツのことはよく知らないがフェラーリは大好きだ、運転したこともないけれど。
イタリア工業製品の真髄を語ると同時にその限界を自らさらけ出すのはフェラーリならではだから。

本シネマは、古く良き時代の組織と一匹狼の確執、
言葉を換えれば天才とビジネスマンとの永遠の闘いを描くものという理解もある一方、
モノづくりの原点を懐かしむノスタルジックな展開になっていました。

今から考えれば正統派マーケティングのアイアコッカが提案した若者を取り込むためのルマン参戦は的を得ていたことが分かります。
その経営戦略を実現していく困難さも巨大企業フォードならではのビジネスサクセスストーリーとして興味深いものでした。

しかしながら シネマはフォードにいながら異端と称せられたレーシングドライバー二人の生き様をメインにして進んでいきます。
老舗にして最大の自動車産業にたてつくことができない2匹の狼の切ない心情が全編を通じて描かれます。

演じるはクリスチャン・ベールとマットデイモン。
相変らず実在モデルに近づこうとするクリスチャン、
たいしては我が演技プランにブレ無しというマットの演技構成の対比が愉快です。
フォードレーシングカーの力強さ、対するフェラーリの優雅さ、
エンジンの迫りくる爆音に興奮しないわけもありません。

しかし僕は贅沢な不満を感じながらシネマに接しているのでした。
この満足感は期待したものとどれほどの違いがあるのか?・・・・と。

名優と名車、そしてルマンの長い一日、
思い描いた通りの映像に接しながらも突き抜けた感動には程遠いものがありました。

時代はもうすでに自動車から電気自動車、そして無人運転カーの時代になっているのです。
シェルビー、マイルズの輝きはすでに歴史の中にしまい込まれていました。
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