アイ・アム まきもと (2022)

文字数 832文字

【天使の小便】 2022/10/3


予告編情報から判断して、阿部サダヲ 独り舞台の変人物語を見てみようと割り切っていたので、物語の決着が宗教的だったこと、想像以上の感動だったことに、思いがけず心を揺さぶられてしまう。
いつもの後知恵ではあるが、原作がイタリア産であることを知り大いに納得した次第だ。

孤独死担当「おみおくり係」の市役所職員主人公が、最後の担当死を執拗にお世話するところから巻き起こる笑いと涙になっている。
シネマはまさにその通りの展開でスタートする。
市役所職員の主人公の他に、死を判定する警察、葬儀社、焼き場の機能が詳細に描かれる、それも一見ドキュメンタリータッチで。
主人公の特殊な持ち味がこの仕事に適しているらしいこと、周りの人々も本音では主人公を受け入れていることがその伏流で語られる。
やはり、阿部サダヲ劇場になるのかなと思ったころから、シネマは豹変する。

最後の孤独死者(宇崎竜童さん)の近親者を追いかける旅が始まる。
食肉工場の元同僚、同棲していた食堂の女性、食堂に集う漁師、炭鉱の元同僚、ホームレスの男たち・・・・主人公が追いかけるのは 一人の男の人生だという展開になってくる。
この男はいったいどんな人?
なぜ孤独死になった?
葬儀に来てくれる人はいるのか?
立派なミステリーに変身していた。
しかし一方で、ある男のアイデンティティを市役所の職員が追い求める不思議が、逆に僕の胸をよぎる。

肝心な場面でいつもトンチンカンな会話・反応に終始する主人公が最後に起死回生の通快打を放つ。
そして哀しみのエンディングに登場してくる救われた魂の数々、主人公は天使だった、それも人間に化けるのが下手な天使だった。

虹の向こうに見えてくる天国、なかなか洒落た脚本であり、芸達者な皆さん(宮沢りえさん、松尾スズキさん、満島ひかりさん他多数)にぴったりの台詞の数々だった。
知らないうちに阿部サダヲさんは物語りの一つのピースにぴったりと収まっていた、決して独り舞台などではなかった。
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