ベル・カント とらわれのアリア (2017) 

文字数 697文字

【ジュリアン・ムーアに おんぶにだっこ】


ペルー日本大使館人質事件をモデルにしたであろう物語、
その後味の悪い結末を現実のままなぞったため、救いのないやり切れなさに包まれました。

ここは、ジュリアン・ムーアと謙さんのロマンスに救いを見出したかったのですが、
言葉の壁をフィーリングでカバーする戀愛劇には、常にぎこちなさが付きまとっていました。
二人の名優がそれぞれに役柄に没頭すればするほど、虚構が浮き上がってきます。
稀代のアメリカ人オペラ歌手と彼女の熱烈な日本人ファンの出会いがシネマすべての始まりであり、同じように別れがシネマすべての終焉になっています。

謙さんは得意の英語を封印されてジュリアンとの愛を育むのですが、どうしても「無理」が這い出てきます。 黒子のような立場の通訳の加瀬さんは、文字通りシネマのなかで通訳をするという「まどろっこしさ」を背負います。
そして解放戦線ゲリラ少女との拙い愛、熟年カップルの言葉不要な愛と対照的でしたが、そこには「違和感」が煙っていました。

不勉強で原作の内容を把握していませんが、その完成具合というよりもやはり映像化における手直しが足りなかったようです。
純粋で無教養なゲリラと老練で下劣な政府(大統領)の安易な対比は、まさに安直すぎるものです。
ベル・カント(美しいしい歌声)のタイトルですが、劇中の歌唱シーンは訴えてくるものに欠けているように感じられました。
この唐突さこそが本シネマの根源的な負の要素だったような気がして仕方ありません。

老婆心:
ジュリアン・ムーアさんの飽くなき役者根性、どんな役にも挑戦するお気持ちが大きな救いでした。
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