ブラック・スキャンダル (2015)

文字数 693文字

【ジョニー・デップに 何か賞をあげて】 2016/1/30



ボストンのマイナーなギャンググループボスが主人公。
幼なじみの3人が悪と正義の立場に分かれて確執するらしい、という予断があった。
そうすると、具体的に「ミスティックリバー」との類似性を意識してしまうのは仕方なかった。
しかしながら、デニス・ルヘインの悲しみに包まれたフィクションとは全く違う
実録物語を目の当たりにした。
ルヘイン vs 飯干晃一 くらいの落差があったが、
その分仁義なき戦い風味の凄味を愉しむことはできた。

もっとも、ボストンのギャングには仁義などはない、あるのは欲と怒りだけだった。
本シネマは、喧伝されているように 
幼なじみだったギャングとFBI捜査官の癒着、汚職が大きなテーマである。
しかしその実態は、FBI捜査官(ジョエル・エドガートン)の職業倫理崩壊であり、
それを利用するギャング(ジョニー・デップ)が突き進む狂気のカタストロフィだけだった。
見ている僕には何の救いのない物語、一欠片の余韻もなかった。

ここまで実録モデル路線を推し進めた、スコーット・クーパー監督の根性には感服した。
その恩恵は、しかしながら、ジョニー・デップにのみ与えられるのだろうか?
周りの助演陣が霞むほどの演技だったのは事実だが、
最初から彼のための作品だったことは間違いない。

老婆心:
「ミスティック・リバー」でショーン・ペンを告発する刑事を演じた
ケヴィン・ベーコンですら、輪郭のはっきりしないFBI上司でしかなかった。
まして、カンバ―バッチの上院議員の役割は一体何だったのか。
だからこそ、ジョニー・デップは賞を狙えるのだろう。
繰り言でしかないけど。

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