ある船頭の話 (2019)

文字数 516文字

【シネマの原点 パーフェクトワールド】 2019/10/2



日本の懐かしい風景が次々と映し出される。
映画(シネマの邦訳)とは画を映し出すことであったことを思い知らされた。

本作は川渡し船頭の物語、
川面に漂う霧、写る夕陽、
高く青い空、真っ白な雲、荒々しい原生林の緑、
川岸の岩石、ミズスマシ、小さな魚、
渡し船に乗り込む男、女、老人、村人、よそ者、

こんな映像の真摯さに圧倒され僕は声も出せず、しかし満足する。
この渡し船の世界に、もう他のものは無くてもいい。
名優の内に秘め魂の演技も、
痒い所に手が届くような脇役のアシストも、
目を見張る美女も、
あっと驚くような展開の筋書きも、
みんな無くても平気だ、
もっともっとパーフェクトな映像を観続けたいと願っていた。

そんな思いを裏切るようなクライマックスでのカタストロフィー、
自然と人間との営みに対する控えめだが厳しい糾弾が待ち構えていた。
そして、
柄本明という名優が牙をむいて僕に向かってくる。
豪華脇役の引きも切らない登場、
なんと美しい女優さんにまで対面できた。

このシネマは奇跡に違いない、
いやオダギリ・ジョー監督にとってシネマは奇跡などではないのだろう。

本年邦画ベストと確信した。
ありがとう キノフィルム。
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