街のあかり (2006)

文字数 673文字

【珍味】 2008/4/13



「街の灯り」なら堺正章さんなんだけどね。
「街の灯」になるとチャップリンなんだってことを今日確認した。
日本語って繊細なんだね。
ちなみに英語タイトルによると本シネマは「夕暮れの灯火」ってとこだろうか。

チャップリン賛歌とも受け取れないこともないが、
本シネマ、かの名作とはまるで対極に位置する。
チャップリンが必須アミノ酸をたっぷり含む滋養食材だとすれば、
こちらはは知る人ぞ知る、知らないものは手を出すこともない「珍味」だろう。
その特徴は薄味淡白。

もったいぶれば「ミニマリズム」と称することも可能だけど、僕は食い足らなかったな。
冒頭、「ボルベール」が流れ、慌てて作品アイデンティティに集中しなおしたものだ。
せっかくの凝った選曲の数々には申し訳なかったが、
観ている間僕の頭の中に聞こえてきたのはマチャアキの歌う「街の灯り」だった。

♪そばに誰かいないと
 沈みそうなそうなこの胸
 まるで潮がひいたあとの
 暗い海のように・・・♪  (作:阿久悠)

このくらい濃い目の情感と、マチャアキの歌唱力を思い浮かべないと、
物語についていくことができなった。

誤解を避けるためにはっきり付け加えると、「珍味」は不味い・・・という意味ではない。
間違いなく僕はこの珍味を試食し、確かめた。
「敗者三部作・最終章」と喧伝され、こちらもそれなりにあれこれ想定していた。
結果、
あまりにも素直な語り口に、ある意味、大きく裏切られた気持ちだ。
たとえば「フーテンの寅」のように笑いで痛みを中和することもなく、あるがままだった。

味付け最小限の「無害珍味」とでもしておこう。
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