ミッドナイト・バス (2017)

文字数 750文字

【「感動」 丁寧に作られた良質のシネマ】 2018/2/8



新潟日報周年事業として製作されたことが冒頭にもはっきりと示される、
その自負が眩しいシネマだった。
その想いは、新潟市、三条市、佐渡市での丁寧なロケにも証明されていた。
といって、ご当地シネマのような上っ面を撫でるだけのような映像ではない。
繰り返される白鳥の群れ、トンネルに入っていく深夜バスのざらついた視界、
そして雪のバリエーション、
157分はそのために必要だった、全く長いという感覚はなかった、僕には。

物語は、バラバラになった家族が一つにまとまりそして新たに離れていく。
そう、家族は結局は離れて生きていくしかない切なさと、
その勇気と、その歓喜がテーマになっている。

妻と離婚して以来深夜バス運転手として頑なに自分の殻の中で生きる主人公(原田泰造熱演)。
別れた妻は父親と実家の整理のため新潟に戻り元夫と再会する。
主人公には二人の子ども、それぞれに今様の問題がある。
本人にも長年付き合ってきた恋人が東京にいるが、決して心を開こうとしない、
新潟ではない異空間の恋なのだから。
主人公を中心に、恋人(小西真奈美)、元妻(山本未来)、義理の父(長塚京三)
二人の子供の心の葛藤を丁寧に描いていく。

ドロドロした愛憎劇になるところをシネマは常に冷静に登場人物を眺める、
そこには製作者の深い愛があった。
ありきたりの愛情シーンなど無い。

終盤 元夫婦二人が、固くハグするシーンが異様にエロチックだった、
映像なんてそんなもの。
本シネマの良識と上質を確信したシーンだった。

《新潟はとりわけ寒いところ。、だから人の暖かさがなにより》 
また一つシネマの名セリフを聞いた。

願わくば、山本未来さんに演技賞(どんな賞でもいい)を差し上げて欲しい。
彼女は本シネマで神の領域に入っていた。

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