あなたへ (2012)

文字数 976文字

【拝啓 高倉健様】 2012/8/26



拝啓
高倉健様

「千里走単騎」から7年がたちました、
またスクリーンでお目にかかれましたこと嬉しく思います。
妻(田中裕子)の散骨のため富山から長崎に旅する今回の物語は、
健様の本来の役柄とは遠くかけ離れているのでは?
でもそんなお姿もいいかな?・・・などと覚悟して拝見しました。
思い返せば、健様若き日の極道の香りは名作「夜叉」以来消えてしまったのでしたね。
でも近年の健様もすばらしいご活躍でした。
さて、
本作品で驚いたのは、健様が受身の演技に徹していたことでした。
お名前を挙げると、田中裕子、佐藤浩市、草薙剛、余貴美子、綾瀬はるか、長塚京三、
原田美枝子、浅野忠信、ビートたけし、大滝秀治、など
ベテランから若手までたくさんの俳優さんたちとロードムービーを紡いでおりますが、
そのほとんどが寡黙なリアクションのみでした。

健様に根強く定着した「不器用ですから」とは異質の静かな役作りだったと思います。
一方では健さん作品常連の、また新しく参加した俳優さんたちがどんな役柄で健さんに絡まるのか楽しみにしていました。
車上荒らし窃盗犯、警官、職場の上司、その妻、駅弁イベント販売員、港町食堂の母娘、漁船オーナー、
・・・皆さん上手に健様を盛り上げてくれました。

実はこの散骨にはちょっとしてミステリーがありましたね。
妻の古里(長崎)の小さな漁港まで行かないと
妻の最後の手紙を受け取れないという仕掛けがありました。
健様も「いったい何故 ?」と自問しながらの旅でした、一ひねりある設定でした。
「夫婦とはおかしなものですね」
それに隠れたかのようにもう一つの謎が静かにうごめき、
エンディングで解き明かされるサービスも嬉しいものでした。

海に接するように沈む太陽、
にじむ夕陽に浮かび上がる散骨船のシルエット、
健様の影、美しいショットでした。

そういえば、本シネマでは健様がシーンの真ん中に位置することが多かったようです。
そうなんですね、やっぱりこのシネマは健様の作品だったのですね。

最後になりますが、しつこいのは重重承知のうえですが、
なんとか「鉛のバラ」(丸山健二)のシネマ化はならないのでしょうか?
もう一度強くて怖い健様を見たいというのも本音です。

またスクリーンでお会いできる日を心待ちにしております。
                          敬具

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