天国でまた会おう (2017)

文字数 695文字

【「炎の色」でまた会おう】  2019/3/11



原作者ピエール・ルメートルには 
いまだに 《「その女アレックス」の…》という冠がつく。
確かに「その女アレックス」は衝撃的なミステリ小説だった、間違いない。
エポックメイキング的なミステリーに魅了された僕は
本シネマ原作「天国でまた会おう」に多大な期待を寄せた結果、
少し失望したことをよく覚えている。
世界大戦三部作第一弾の「天国でまた会おう」に面食らったのはミステリー要素が大幅に減量されていたからである。
そのエッセンスは壮大な歴史大河物語であり
オーソドックスですらあるフレンチ人間喜劇にあった。

いやいや、ここはシネマの話をしよう、原作ではなく。

第一弾シネマのモチーフは父息子の愛憎、悲惨なる戦争、
戦後混乱のピカレスクのミックスになっている。
ピエール・ルメートルには失礼だが、あの長編物語をコンパクトにまとめた本シネマは
原作を超えていた。
大河物語ならではの細やかな説明は映像的処理で簡潔にスピードアップしてくれる。
フランスの1920年、第一次世界大戦直後の風景、人情などには
からきし不明な僕には本シネマの映像はありがたかった。
ドイツ軍との塹壕戦、大戦後の退廃的世相、やまない愛国思想
・・・・シネマならではのモンタージュ特権だった。

映像の圧巻は、やはり若き天才画家の仮面姿だろう。
そこには文字で想像するおどろおどろしさはなく、
仮面の奥から切々と語りかけてくる瞳、涙が切なくも美しかった。

第一弾の結末、単純なハッピーエンドとは思わせない余韻があった。
第二弾 「炎の色」への布石もしっかりと敷かれていた。
世界大戦三部作すべてをシネマで観てみたいものだ。
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