光 (2017)

文字数 732文字

【押し付けがましいですね】 2017/5/29



オリエンタル風味の押しつけがましさがなかった前作「あん」、
実は永瀬さんの隠れたオリエンタル演技に支えられていた。
その永瀬さんを再び起用した本作は、
永瀬オリエンタルと河瀬オリエンタルのしのぎ合いになってしまった。

物語の骨になっているのが、視覚障碍者のための映画鑑賞ガイダンスというシステム、
僕は全く知らなかった。
視覚障碍者にシネマ展開を的確に音声で伝えるという仕組みだ、
脚本と異なり出来上がった映像を説明するという厄介な作業だ。
本来は製作中枢の方々が担当すればいいのだろうが、
どうやらその専門家が存在するようだった。

このガイダンス作成はシネマファンから見ると究極の苦役なのだと恐怖した。
健常者はシネマは総合芸術だと賛美して、
脚本、脚色、監督、編集、演技、美術、音楽、特殊効果などなどを
全身で享受したうえで、傑作だとか駄作だとか能書きを垂れる。

本シネマは、そんな僕に 
「じゃあ、例えば好きなシネマのラストシーンをガイダンス説明してみろ」と挑戦する。
スクリーンに見たものをそのまま説明するだけでは過多になり、
と言って想像力に任せるとして無言を通すこともできない。

本シネマはこの葛藤に悩む女性と、
毎日視力を失っていくカメラマン(永瀬さん)の交流を描いていく。

今作のテーマはとても日本的だった、
視力を失うことが東洋の神秘のようにさえ感じられた。
ヨーロッパだったら、
きっと仲間たちが笑顔でカメラマンの再出発を応援するんだろうな。

お決まりの奈良の山・森・空の長目のショット、
人物のクローズアップの連続、手持ちカメラの揺れ加減、
それらはオリエンタルなシネマ作法だとでもいうように執拗だ。

永瀬さんの起用はそんな中唯一の救いだった、名演。

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