首 (2023)

文字数 670文字

【コント《戦国残酷物語》】 2023/11/24


別タイトルとして「戦国残酷物語」を差し上げたくなるほど、人が無残にしかもあっさり殺される、多くの武士が農民が庶民が。
そんな血糊の匂いがするシーンですら、コントの落ちで締めくくる北野シネマ、北野監督の深い想いをビート・たけしが愚直に表現する怖さを感じ、笑いが凍りついた。

タイトルであり、最初からそして最後のシーンに至るまでゴロゴロ出てくる「首」、そこに御大は何を象徴していたのか?
首は、すべての規範(常識と言ってもいい)を象徴する。
古くからの因習、肉欲の在り方、身分・階級、あらゆる理不尽な差別の象徴と言ってもいい。
そんな首を有難がる本シネマの登場人物は戦(いくさ)のない平穏な世界を実現するという戯言などハナから信じていない男たち。

いわゆる史実と認められてきたエピソードを彼らが悉くつぶしていくパワーが本シネマの真骨頂だった。 その中心に座する秀吉を演じるビートたけし、人生の思いの丈をぶちまけていた・・・・「ふざけんじゃないよ」とすら聞こえる。
軽妙なお笑い雰囲気で天下を取る秀吉、権力者はこうありたいものだ。

突き抜けた狂気の信長(加瀬亮さん)、達観し過ぎる光秀(西島秀俊さん)、投げやりの村重(遠藤憲一さん)、汚れ過ぎの茂助(中村獅童さん)、活躍し過ぎの新左衛門(木村祐一さん)、トリオ漫才の官兵衛・秀長・秀吉(浅野忠信さん、大森南朋さん、たけしさん)、戦国時代の終焉を嘲笑うかのようなコミカルシークエンスに酔いしれるうちにシネマは突然終わった。
こんなシネマも悪くない。
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