長いお別れ (2019) 

文字数 627文字

【二段仕掛けのカタルシス】  2019/6/6



中野監督には前作「湯を沸かすほどの熱い愛」で、
してやられた快感がいまだに後を引いている。
だから、本シネマにはすぐにでも飛びつくはずだったのだが、
個人的事情で躊躇してしまった。
僕はいま古希の身だから、主人公(山﨑努さん)設定に近いが認知症ではない、
そうではなく 僕は老々介護(父親の介護)での介護する側にいる。

予告編で紹介される、父親の認知症のいちいちが身につまされた。
「知っているよ、そんなこと」と思ったりもした。
今回の中野フィルムは良心的忌避にしようと思っていた。

そんな時の蒼井さんご結婚のニュース、
ご祝儀替わりで やっぱり観ようと思い立った。

俳優陣はもともと芸達者な方々ばかり、
そんな彼らが本気モードで演じているのに気づくのには時間はかからなかった。
冒頭から僕は、引き込まれていく。
頭の中をよぎるのは、いつ あの 
「湯を沸かすほどの熱い愛」で嵌まったトリックに遭遇するか…ばかり。

それは中締めともいうべき、メリーゴーラウンドのシーンだった。
このエピソードで僕は不覚に落涙してしまう。

しかし物語は続いていく、
本当に中締めでよかったのか?
ここですっきり終わってもよかったのでは?
そのくらい思い切り心を持っていかれてしまった、中締めシーンだった。

中野フィルムは、今作でも生きる希望を輝かせて終わる。
祖父から孫へ、引き継がれる家族の絆。
「枯れ葉と若葉」にメタファーされた、人生不変の理、
静かなカタルシスに浸った。
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