トラッシュ!-この街が輝く日まで- (2014)

文字数 882文字

【恥を知れ、大人ども】 2015/1/16



三人の子供たちが活躍する痛快シネマではある。
彼らが大人の世界の秘密を偶然手にすることから生じる一種の革命ファンタジーでもある。
近年SNSを通じて沸き起こった世界各地の民衆蜂起に結びつく物語ともいえる。
そんな意味からすれば、とっても現代的なテーマなのかもしれないが、
実は鑑賞後の余韻の中、厳しい自己反省を覚えてしまった。

思いっきりのネタバレだが、
汚職で貯め込まれた札束を文字通りゴミの山にゴミのようにまき散らすシーンに、
思いがけず我が身の「賤しさ」を感じ狼狽えてしまった。

物語の場所はサッカーワ-ルドカップ、そしてオリンピックが開催される予定のブラジル。
実際にメディアでワールドカップ直前の抗議デモが紹介されていたのは記憶に新しいが、
まさに国家プロジェクトの裏側に巣食う汚職、腐りきった警察権力が
本シネマでは直截に描かれている。
汚職の莫大な現金と帳簿のありかを知らせる手がかりをゴミの山から手に入れた子供たちが取った行動の原点は
「正しいことをする」という1点のみ。

命を狙われるまでになった子供たちが、秘密に迫る道筋も、
それを追い詰める警察官の大人力もスリリングに仕上がっている。
所詮子どもの力…などと侮っていると最後にはその子供に思いきり
足元をすくわれる権力悪を眺めるのが
本作のカタルシスになっていることには違いない。

なにより登場する大人たちが皆強欲なのである。
そもそも、腐った権力に一矢を報いる正義の男ですら、現金も盗む、
ブラジルの役人は必ず賄賂を要求する、悪徳警官も現金を独り占めする。
21世紀の経済の傾向は、残念ながら「貧富格差の拡張」だそうだ。
そこでは、景気が良くなれば、給料が増えれば、株価が上がれば人々は幸せになるらしい。
人間というものは「お金」さえあれば満足するらしい。

三人の子供たちは違った。
正しいことをすることが大切なのだと。
札束をゴミの山に投げ捨てることが正しいことだと。

「札束を投げるな、勿体ない!」と本気で叫ぶ僕がいた。
三人の天使の教えに、そのあと気が付いた。
札束こそゴミ山に良く似合う。
恥を知った。

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