ジャージー・ボーイズ (2014)

文字数 739文字

【音楽愛に満ち満ちた傑作】 2014/9/27



天才にしか天才を描くことができない。
クリントが「フォー・シーズンズ」をいともカジュアルに描き切ってしまった。

僕はと言えば「シェリー」をラジオにかじりついて聴いていた中学生のなれの果て。
当然のこと、フォーシーズンズのグループメンバーのことなどに
興味を持つお年頃ではなかった。
ただただアメリカンポップスにあこがれていただけだった頃から50年、
このグループの興亡を初めて知りえた。

そこでは、フランキー、トミー、ニック、ボブの4人のメンバーの人生が
心優しく語られていた。
実在人物への配慮ということではなく、
クリントが4人の成し遂げた歴史に深く敬意を表しているのが伝わってきた。
劇中では、
「フランキーとボブの天才音楽家 vs ニックとトミーの俗人」
構図が敷かれているものの、ロック殿堂入り表彰式での4人の会話から
4人とも信念の持ち主だったことを敢えて説明している。

珍しいスタイルだが、登場人物がカメラ目線での「自分主張」する。
ここでも、クリントは一元的な物語展開を捨て去っている。
フランキーは:
なぜ、トミーの作った借金をフォーシーズンとして支払う決意をしたのか?
なぜ、結婚生活に敗れたのか?
どうやってフランキーは娘の死から立ち直ったのか?
ボビーは:
「シェリー」、「恋のヤセ我慢」「君の瞳に恋してる」を作ったいきさつとは?
ニックは:
なぜ、ツアー中のフォーシーズンズをやめることになったのか?
トミーは:
音楽面での平凡な才能を自ら知りながら、リーダーとしての矜持は何だったのか?

俳優たちの実際の歌声でフォーシーズンズのヒット曲が流れる中、
僕は人間の暖かさに浸って幸せだった。
クリント・イーストウッドのアメリカンミュージック世界への愛情に満ちた傑作。

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