スリー・ビルボード (2017)

文字数 679文字

【忘れていた濃密な人間関係】 2018/2/2



かなり早くからの予告編上映に被さるように
アカデミー賞ノミネート(作品、主演女優、助演男優)の知らせがあった。
このノミネートから推察できるように、俳優陣の大きな貢献で本作品の価値が輝いていた。

テーマはミズリーの小さな町のトラブルメーカーオバサン(フランシス・マクドーマンド)が
警察署長を名指しで批判したことから発する騒動の数々。
スリービルボード、三枚の屋外看板にかかれたのは女の娘のレイプ殺人事件捜査への不満。
名指しされた署長(ウディ・ハレルソン)は末期癌、町の人たちはさてどんな反応をしめすのか?

小さな田舎町の住民が濃密にスクリーンに再現される。
2人のほかに、差別主義の暴力警官、広告代理店(看板の)青年社長、
女の元亭主と若い愛人、高校生の女の息子、
署長の妻と幼い子供たち、女の仕事パートナー・・・。

主人公の母親が一番厄介な存在だ、娘を殺した犯人を見つけるためには、
行く手を邪魔するものに敢然と敵対する。
その戦いにはプアーホワイトの憤り、海外戦争の後遺症、南部の歴史的差別観が
日常に溶け込んでいた。

シネマとしては、その行動が町の常識に従うことないダーティーヒロインとして魅力的だが、
途中の惨事から大きく流れが変わっていく。
ひとりが憎しみを止め、相手を赦し、そしてそれはもう一人を愛で包む
・・・その連鎖が小さな町を包んでいく。
ネットの仮想社会ではなく、生身の人間たちがぶつかり合って自分たちの過ちを正していく。
その濃密なコミュニケーションを僕はすっかり忘れていたことに気付く。

なるほど、今の時代が忘れていたものだ。

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