ソロモンの偽証 後篇・裁判 (2015)

文字数 608文字

【バランスを欠いて失速した大鵬の雛】 2015/4/18



前篇を拝見して、怒涛の後編を期待したが、
結果として土砂崩れ模様の散々で残念なことになった。
何故だろう?

まず生徒たち(新人、ジュニア俳優)への過剰な思い入れが、
総合芸術としてのシネマの調和を乱してしまった。
「思い入れ現象」の最たるところは、長いシーンでの長い沈黙、
その反対の長い台詞の投入・・・僕には苦痛な時間帯でしかなかった。

「調和」で言うなら別の問題もあった。
前篇では、中学生たちの純粋な気持ちを冷静に見守っていた大人たちが、
後編ではその存在感を主張してくる。
それ自体は中学生の一途さと、大人たちの現実感という対照で見所になるはずだった。
実際には、しかしながら、僕が期待していた「中学生による裁判ファンタジー」が
侵食されどんどん色あせ、僕はどんどん辛くなった。

なにより、テーマでもありミッションといってもいい
「中学校の伝説」を検証する設計図が破綻してしまう。
なんと年を重ねた主人公その人に「非レジェンド宣言」をさせる。
意識を失うまで自分を表現した主人公が大人の世界への順応を肯定し、
少年少女だった過去を嗤う。

絵空事とはいえ、中学生による裁判は、僕らにもできたかもしれない
・・・そんな幼い日の甘い想像を、シネマの最後で否定されるとは。
いったい何のために後編を観たのかわからなくなってしまった。

宮部小説は、またしても天空を駆け上ることにはならなかった、残念至極。

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