清須会議 (2013)

文字数 771文字

【オチャラケのようでオチャラケでない?!】 2013/11/9



何せ本シネマの番宣のすさまじさは尋常ではなかった。
恒例のフジTVジャックを筆頭にCMに至るまで、
物量、洒落具合においても僕を十二分に楽しませてくれた。
そんな番宣のなかで、監督が「これはオチャラケではない!」と断言し、
大泉さんが「プッ」と噴き出す場面が印象に残っていた。
その時の大泉さんのリアクションに
実は大きな鍵が隠されていたことが本日封切初回にて拝見して気づいた次第だった。

本作品は、ほとんど合戦シーンのない良質な戦国物語に出来上がっていた。
決してオチャラケではなかった、
想像するに大泉さんの「プッ」は「其れ言っちゃっていいの?」の「プッ」に違いない。
そこに見たのは、ひとりの天才(織田信長)からもう一人の歴史が生んだスター
(豊臣秀吉)への継承のドラマだった。

随所に盛り込まれた「しゃべくりギャグ」、計算しつくされた「肩すかしアクション」、
そして全編に漂うビッグネームキャストのサービス、
これらを全部取っ払ってしまえば、
そこに残るのは日本版シェイクスピアとも見紛うサイズの知れない奥深い物語だろう。

自らを天下人と信じて織田家を消滅させ日本の平和を図る秀吉。
自分の時代が過ぎたことを観念し、それでも秀吉を憎めない勝家。
己の器量の貧小さを悟り、保身のため裏切る長秀。
生来の優柔不断と、善良さにこれまた裏切りを選ぶ恒興。
織田家への忠より友情をとる利家。
織田家の政略で愛をもぎ取られ、兄への憎しみを秀吉に転嫁して正気を保つお市の方。
武田家の血脈を守るため精一杯の策略をめぐらす松姫。

この人間模様と卓越した秀吉の人を魅了する能力、胆力に惚れ惚れとしてしまった。
これはオチャラケなんかではない、決して。

笑いは残念ながら小さかった代わりに、シネマ本来の醍醐味を味わえた。
GO GO 三谷監督!

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