対峙    (2021)

文字数 768文字

【真の叫びには赦しすら及ばない】 2023/3/14


高校での無差別大量殺人事件をテーマにしている。
この手のニュースがアメリカから飛び込んでくる度に銃規制をしようとしないアメリカ市民意識を理解できないでいるが、本シネマは被害者と加害者それぞれの両親が面談するという緊迫の設定が作品のすべてだった。
二組の両親と面談会場の教会関係者2名、教会内でピアノ教室して いた教師と生徒、以上8人だけしか登場しない。 両親4名の面談シーン以外は敢えてお気楽になぞるだけ、4人の壮絶な会話とそこから巻き起こる感情のうねりが観どころになっている。

事前情報、上記背景は心構えしていたものの4名の親一人一人の心の中にくすぶっている想いのインパクトに圧倒される。 客観的にみれば(無責任と言ってもいいが)犯人である子供も自殺しているのだからその両親にも同情するところは多いのだが、子供を殺された両親にしてみれば、サイコパスを育てておきながら何らかの気付きがあってしかるべきだと相手を責める。
無差別大量殺人の不可解さは今更言うまでもないが、両親の責任はどうあるべきなのか、難しい命題である。

二組の立場の違う両親、その父親母親にもそれぞれ子供への感情がある、どこに到達すれば4人の心が癒されるのか?
単純な加害者・被害者の対立物語りから、結末を模索するミステリアスな展開になってくる。
最後の最後までぎこちない言葉の遣り取りしかできない、赦しとか寛容とかの概念では納得満足できない不完全な結果で別れを告げる4人。
そうだよね、解決の道筋などあるわけもないよね・・・と諦めた時に奇跡が起きる。

舞台劇のようなシチュエイションと洗練されたセリフと老練な俳優たち、それだけでも胸いっぱいだったのに、シネマらしいカタルシスにも巡り合えた、シネマの進化は止まらない。
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